かつての武器輸出大国ロシアはいま

社会・2022-12-03 20:51
かつての武器輸出大国ロシアはいま
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いまのところ、ロシアへの経済制裁が思いのほか効いていない。
もともと経済制裁は、劇的に効くものではなく、じわじわと効いてくるものとされているが、ロシアは小麦の輸出量世界一の国、さらに原油や天然ガスの輸出国で、自国の燃料は心配がない国だ。

現在も、長く世界の多くから経済制裁を受けている北朝鮮は、それでも核実験やミサイルの発射を繰り返している。
北朝鮮ほど貧しい国でさえ、経済制裁だけではなかなか大きな効果は得られないのだ。

むしろロシアに経済制裁を科しているはずの欧米のほうが、電気やガス、ガソリン、食料の高騰に音を上げそうになっている。
国によってはガス代が例年の10倍以上に上がっているところもあるくらいなのだ。

ではロシアはまだまだ安泰かというとそうではない。

例えば戦争前まで、ロシアは世界2位の武器輸出国であった。
ところがいまロシアは武器不足におちいっているという。
2021年のロシアによる武器輸出額は、146億ドル(2兆148億円)であった。
そのロシアが武器不足。

実はここに経済制裁が効いている。

ロシアの主要な戦車製造会社が、二つも生産停止を余儀なくされている。
必要な半導体が手に入らなくなったからだ。
そして今年になって、カザフスタンから大量の冷蔵庫など白物家電がロシアに輸出されている。
その理由は、米国のレモンド商務長官によると、「ウクライナ軍がぶん捕ったロシアの戦車から、冷蔵庫や食洗器から取り出した半導体が使われていた」と発表。

もし本当なら。その戦車はまともに動けていたのだろうか? 家電に使われる半導体と戦車や兵器に使われるものとはレベルが違うはずなのだ。

武器不足のロシアは、北朝鮮からも砲弾などを輸入しているという。
ロシアと北朝鮮が接している鉄道を通してのことだという。

しかもいま世界中がウクライナの戦争に注目している。
武器輸出国としては、世界中に実戦における宣伝をしているのだ。
そして世界が目にしているのは、破壊されたロシアの戦車であり、西側の迎撃ミサイルに8割も空中で破壊されてしまうロシアのミサイルだ。

この現状を見て、ロシア製を買ってきた国は、いくら安くてもふたたび買おうとするだろうか?
これまでロシアの武器を買っていたのは、主に中国やインドだが、中国はもはや自分の国で作り出すだろうし、インドは西側の武器を買うだろう。

ロシアへの経済制裁は意外なところから、効いているようだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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