アメリカ人は昔牛肉より豚肉を好んでいたってホント?

エンタメ・2023-01-08 18:36
アメリカ人は昔牛肉より豚肉を好んでいたってホント?
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米国を象徴する食べ物といえば、大きくて分厚いステーキかもしれませんね。
しかし米国人が、牛肉を豚肉より好むようになったのは、1950年代以降のこと。

かつて英国から新天地を求めて多くの人が移ってきました。最初は羊、ヤギ、豚、鶏などを運んできました。
これらはすべて狭い場所や貧しい土地でも飼える動物です。アメリカ大陸は広い大草原と同時に大森林もある国です。
中でも豚は元々森林でドングリなどを食べ放し飼いできる動物。そこで米国人たちは豚を飼いだした。
豚は牛に比べて5分の1ほどの費用で食肉にすることができるのです。
豚肉は安くて美味しい、当時の米国では人気ナンバーワンの食肉でした。

豚は牛と違って人間の残飯も食べるし、何より牛に比べて人間の住居近くで飼うことができる。
一方、牛はそうはいかない。西部劇でも描かれているように、カウボーイが牛を追って何日も旅をしなければならない。

さらに大草原には牛のライバルがいました。バッファローことアメリカバイソンです。

北米に移民してきた開拓者たちは、それまで平原に住んでいたバイソンを積極的に殺していきました。その目的は皮や肉をとるためではなく、牛の放牧地を広げるためでした。

そしてバイソンが減るに従い草原には牛が増えていったのです。
やがて米国に鉄道網が敷かれるようになります。ほぼ同時に冷蔵や冷凍の技術が生まれます。
それまでカウボーイが牛を追って大草原に出て行って、都市に戻ってくるというものでしたが、途中に駅を作り解体、加工して一気に都市部に送るという方法が可能になったのです。

さらに牛の品種改良、牧草の品種改良、飼料であるトウモロコシの品種改良、放牧ではなく牛舎の中でトウモロコシ以外の大豆などを使った高カロリー飼料の開発、ビタミン剤や抗生物質を飼料に混ぜて食べさせる。
牛舎では夜も明かりをつけて一日中飼料を食べるような環境を作る。こうしてより効率的に牛肉を生産することができるようになっていきました。

すると牛肉が安価になってくる。
そして20世紀後半になると、女性の社会進出が女性をキッチンから遠ざけ、朝食や昼食はハンバーガーなどで済ますようになる。
バーベキューの流行などが、米国人の嗜好を豚肉から牛肉に近づけていく。
というのも豚肉には寄生虫がいるため、当時の米公衆衛生局と医学協会は、豚肉をピンク色から灰色にかわるまでよく火を通すようにという教育を徹底して行なっていたといいます。
するとバーベキューでの豚肉は汁気が落ちて味も落ちる。そして人気も落ちる。

牛の飼育や生産の合理化、牛肉人気でやがて米国では豚肉より牛肉のほうが安くなっていきます。

こうして1950年代から、牛肉は豚肉人気を追い抜き、米国で人気ナンバー1の食肉になり、ステーキは米国を象徴する食べ物になっていったそうです。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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