台湾有事は日本有事 一つ間違えれば米中全面戦争に
社会・2023-01-20 18:541月9日、米CSIS(戦略国際問題研究所)が台湾有事について24通りものシミュレーションを公表した。
結果から言うと、ほとんどのシナリオでは台湾側が中国軍を撃退するというものであった。
ただ。この結果で安心してはいけない。
台湾側が中国軍を撃退するというシナリオでは、沖縄嘉手納基地、山口岩国基地、東京横田基地、青森横田基地といった在日米軍が総出で中国軍と戦い、さらに日本の自衛隊も一緒に戦うというものである。
つまり在日米軍がいる日本は台湾防衛の台湾に次いで重要地点なのだ。
またたとえ押し返せたとしても、決して楽勝ではない。台湾有事の際、台湾軍の死傷者3500人、米軍の死傷者1万人、中国軍の死傷者1万4500人。
米軍の損失は航空機168~372機、空母2隻を失い、自衛隊は航空機が100機以上、艦船26隻に大勢の自衛隊員も犠牲になるという。
その理由として、射程5500㎞までの短・中距離ミサイル保有数が、米軍は0発なのに対して、中国軍は約1900発と圧倒的な差があるため、最初はミサイル等で台・米・日は大きな被害を出すも、その後押し返すというものだ。
この差は、1987年に米国と旧ソ連との条約で「中距離核戦力全敗条約」を結び、米ソの中距離ミサイルがすべて廃棄されたためである。
この条約は2019年に失効しているが、現在も米軍は中距離ミサイルを保有していない。
このミサイルギャップを埋めるために米国は、2025年までに「海兵沿岸連隊」という対中国用の海兵隊部隊を置く準備をしている。
また自衛隊は石垣島などにミサイル部隊を置き、2027年までに陸自・海自・空自を統合する『統合指令部』を創設し、米インド太平洋軍と協力して、対中国軍を抑止する計画だ。
だがそれでも、中国軍は台湾侵攻への軍事演習を活発化させている。
本年1月9日の台湾国防部の発表によると、中国軍の偵察機やドローン57機が台湾周辺を飛行、そのうち28機が台湾の防空識別圏に侵入。
2年前に台湾周辺を飛行した中国軍機は960機以上だったのが、昨年は1700機以上となっているのだ。
さて、台湾有事が起き、中国軍が沖縄にある米軍基地を攻撃した場合、これは台湾にとどまらず『米中戦争』が勃発したということと、日本国内が攻撃されたことにもなるので『日本有事』ということにもなる。
そして万が一、米軍が中国本土にある中国軍の基地を攻撃した場合、米中の全面戦争になりかねない。
また台湾有事で中国軍を押し返せたとしても、この戦いには勝者はおらず被害と犠牲のみの戦いということになる。
そうならないためには、いかに中国に台湾を侵攻させないかということが、台・米・日のもっとも大きなテーマと言えるだろう。
それは中国に台湾侵攻しても成功しないと思わせることだ。
太平洋戦争の日本も、ウクライナ侵攻のロシアもそうだが、戦争は「勝てる」と思った国がやるものだからだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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