プーチンのロシア帝国は崩壊するか?

社会・2022-11-08 18:22
プーチンのロシア帝国は崩壊するか?
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1980年、ソビエト連邦が崩壊することを予言した書籍が出た。『ソビエト帝国の崩壊 瀕死のクマが世界であがく』(光文社刊)である。著者は小室直樹という学者であった。

この本が世に出たとき、多くの専門家は「そんなバカなことがあるか」と、嘲笑した。しかし現実にはこの書籍が出てから11年後にソ連は崩壊した。

小室氏はもはやこの世を去ったが、このウクライナ侵攻によって、『プーチンのロシア帝国』はまたしても崩壊するのではないだろうか?

ロシア、正しくはロシア連邦。この連邦は89の連邦構成主体があり、そのうち24主体が共和国だ。現在、ウクライナの戦場に送られている多くが、モスクワやサンクトペテルブルクといった都市部ではなく、地方の共和国から招集されている。

最前線に送られるのも彼ら異民族だ。当然、不満もたまる。異民族でなくとも、ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」の調査によると、ウクライナとの和平交渉開始を望む声が57%と過半数を超えたという。

またプーチン政権内でもインフラを徹底的に攻撃し、核の使用や原子力発電所を攻撃しろという強硬派と、復興後のコストを考えれば、インフラや核・原発攻撃はやるべきではないという実務派に割れているという。

実務派にしてみれば、ウクライナの復旧・復興に少なくとも日本円で約50兆円、最大で150兆円の資金が必要になるという世界銀行等の推計が出ており、この戦争の意義に疑問を感じているという。

さらにロシアの専門家で筑波大学名誉教授の中村逸郎氏の情報によると、強硬派のスロビキン総司令官、民間軍事会社『ワグネル』プーチンの料理番とも言われているプリゴジン氏、そしてプーチン氏の盟友チェチェン共和国のカディロフ首長の3人と、ショイグ国防相の対立があるという。

ショイグ国防相は、1991年から2012年までロシアの非常事態省の大臣をやっており、災害復旧のプロと言われた男。クリミア併合の立役者とも言われ、ウクライナ侵攻以前はプーチンに次ぐ人気の政治家であったのだ。

ウクライナ侵攻前はプーチンの後継者とも言われていたショイグ国防相だが、侵攻後はプーチンの信頼を失ったと報道されたこともある。

ちなみにこのショイグ国防相は、モンゴルに隣接するトゥヴァ共和国という、ユーラシア大陸の中央あたりの辺境に生まれた仏教徒で、日本語も話すという。

さて、ロシア全体を包む厭戦ムード。
核も辞さずという強硬派3人VS戦中・戦後のコストを考える実務派。
強硬派3人VSショイグ国防相。

これらロシア内部がきな臭くなってきた。

北朝鮮を見てもわかるように、経済制裁だけでは独裁国家はなかなか倒れない。もし倒れるとしたらクーデターか暴動(レボルト・政権に対する反乱)であろう。いま動員兵の報酬未払いでストライキや小さな反乱がたびたび起こっているという。

フランス革命のように暴動(レボルト)から革命(レボリューション)になることもあり得るのだ。

いまロシアは、いつクーデターや暴動が起きてもおかしくない状態にある。かつてのソビエト帝国が崩壊したように、プーチンのロシア帝国もいつ崩壊してもおかしくない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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