現代ロシアの地政学 ネオ・ユーラシア主義
社会・2022-04-04 18:51地政学は日本やドイツにおいて、侵略の道具として使われた学問として、長く教えることも学ぶこともタブーとなっていた学問である。しかし近年また、注目されるようになってきた。
ロシアにおいては地政学から出た『ネオ・ユーラシア主義』がプーチン大統領に多大な影響を与えていると言われている。
ソ連崩壊後、民主主義に失望し「ロシア・ファシズム」の主唱者であり、地政学者のアレクサンドル・ドゥーギンは、共産主義やファシズムを自由主義や民主主義に代わる政治理念として『ネオ・ユーラシア主義』を主張している。
では、ネオ・ユーラシア主義とはどのようなイデオロギーか? これはユーラシア大陸における欧米の影響力を減らし、欧米の1極支配に対抗するため、ロシアの周辺国に併合・連携して新しいユーラシア同盟を作ろうというもの。
ロシアの理想としては、周辺国に冷戦期のフィンランドのようになってほしいのだ。フィンランドは、冷戦期社会主義国家ではなかったものの、政治経済はソ連の影響下にあった。このような国をロシアの周辺に多く作りたい。
そして、米国が代表する「大西洋主義(シーパワー)」に対抗すべく、ロシアを中心として、旧ソ連諸国や、米国への一極化に抵抗する国々と「新ユーラシア(ランドパワー)同盟」を組み、西側の一極支配を打破すべきだというものである 。
プーチンは基本的にドゥーギンの地政学の影響を受けつつ、より現実的な方法をとってきた。例えば2014年、ウクライナでロシアに付くかEUに付くかというマイダン革命が起こり、世論が一気にEU寄りになったとき、プーチンはロシア系住人を『ネオナチから保護する』という口実でクリミアに侵攻、住民投票により『民主的に(?)』クリミア半島を手に入れたのである。
はたしてプーチンは、欧米の1極支配に対抗するもう一つの世界を作り出せるのだろうか?
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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