怯える軍事大国ロシアの被害者意識(後編)
社会・2022-02-20 15:19あの悲惨な太平洋戦争の日本人犠牲者は約300万人である。一方、ソ連の第二次世界大戦の犠牲者は、なんと10倍の約3000万人であったというから凄まじい。
日本人はあまりピンとこないかもしれないが、第二次世界大戦の主な舞台は、世界的にみるとドイツとソ連の「独ソ戦」であるという。この戦争で、ドイツ軍はウクライナの首都キエフを落とすと、次はソ連の首都モスクワを目指して進軍。このモスクワ攻防戦で、ドイツの死者は約61万5000人。ソ連の死者は約189万8500人。これに捕虜・行方不明者・重症者を加えると約250万人となる。モスクワという首都ひとつの攻防戦で、これだけの被害を受けたのだ。
この「独ソ戦」においてソ連の国富のうち三分の一が無くなってしまうほど消耗した。またこの戦いでソ連はヒトラーを自殺に追い込み、ベルリンを陥落させたため、第二次大戦を終わらせたのは自分たちだという自負があるという。
第二次世界大戦後、ソ連は戦勝国となり、20世紀末にソ連崩壊、現在のロシア連邦となる。
このようにロシアは攻め込まれる立場であることが多く、少なくとも西ヨーロッパに対して先に攻撃したことはほとんどない。せいぜい西ヨーロッパではないが、終戦直前に日ソ不可侵条約を破棄して、日本の北方領土を侵略したくらいである。
そしてこれら過去の経験から、ウクライナなどの緩衝地域がないと不安で仕方がない。ロシアは、過去の歴史は常に被害者側であったと思っている。だからこそ経済力以上の軍事力が必要だと思っているのだ。
かつてドイツがウクライナの首都キエフ占領後に、モスクワを攻撃してきた経験からも、ウクライナがEUやNATOといった敵側の陣営に入るのは、恐怖以外の何物でもない。ロシアはいまでも被害者意識が強く、怯える軍事超大国なのである。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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