江戸時代、町の放火は景気対策だった?
エンタメ・2022-11-08 15:20東京都消防庁によると、家事の原因は1位がタバコ、2位が放火であるらしい。江戸時代は「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるくらい火事が多かった。
江戸は火事が異常に多い都市だった。江戸時代を通して大火と呼ばれる大火事は大阪で6回だが、江戸では49回も起こっている。小さな火事はさらに多い。
現在の東京都千代田区・中央区あたりは3年に1回くらいの割合で焼失したという。日本の家屋は紙と木で出来ていると言われるほどで燃えやすい。
下町の家屋は不動産ではなく消耗品だった。裏長屋など、屋根は板葺き壁は板張りの燃えやすいもので、だから「焼屋(やきや)造り」と呼ばれたほどだ。
世の中が不景気になると、どこからともなく火の手が上がった。放火である。
火事場泥棒や恨みを持つ相手に放火するものもいたが、そういう者は捕まる場合があるが、なぜか捕まらない放火犯もいた。景気対策として町の人も暗黙了解をしている放火犯だ。大火事になると建築ラッシュなどが起きて町が活気づき潤うのだ。
また江戸時代、放火犯を出した町は町ぐるみで責任を取らされた。これは放火に限らずその他犯罪であっても、町の連帯責任であった。
だから放火犯だとわかっていても、みんな知らないふりをする。そのほうがいいのだ。うっかり逃げ損なわない限り、景気が良くなりみんなが幸せになるのだから。
放火犯の中には町火消もいた。火消というのはいまの消防官のように専業ではない。火消は普段とび職の職人。高所を専門とする大工である。
景気が悪くなると、新築建築が少なくなる。すると火事の専門家である彼らが「景気づけにパァッとやるか!」とばかり放火をしたという。
火事が起こると景気が良くなる。だから貧しいものほど火事を喜んだ。仕事にありつけるからだ。
勝海舟が『海舟座談』で次のように語っている。「今年は12月頃から北風だ。すると東京にはたびたび火事があるよ、貧民は火でも放たなければ支えきれまい」
この座談は明治28年のものだが、海舟は幕末の下町で生まれ育った江戸っ子である。江戸っ子のことは誰よりも知っていたのだ。
「江戸っ子は宵越しの金は持たねえ」といったが、それはあまりにも多発する火事のため、財産を貯めても、いつ失うかわからないところから来たという。それくらい江戸っ子は「火事慣れ」していたのだ。
また放火は寺社が狙われることが多かったという。町人の家などに放火すると、捜査のプロである町奉行同心が乗り込んでくるが、寺社なら寺社奉行が管轄。寺社奉行の配下に捜査班などないから、犯人捜しはなんとなくウヤムヤになってしまうのだ。
大火事が起こると、火除け地を作るなど区画整理も行われた。江戸という当時世界最大の都市は、家事によって発展してきたとも言えるのだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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