どうする家康! 三河一向一揆というピンチ
エンタメ・2023-02-18 10:42大河ドラマ『どうする家康』では、これから三河一向一揆との戦いが描かれるそうな。
三河一向一揆は「三方ヶ原の戦い」「伊賀越え」と並び、徳川家康の三大危機と言われるほどのピンチだったのだ。
と、その前に「一向一揆」について軽く解説しておこう。一向一揆とは、室町時代の中期から戦国時代にかけて、当時弾圧を受けていた一向宗(浄土真宗)の信者たちが起こした一揆のことだ。
(厳密な意味では、浄土真宗と一向宗とは違うのだが、この場においては浄土真宗=一向宗としておく)
有名なところでは、「加賀一向一揆」だろう。加賀の守護大名富樫政親が、一向宗への弾圧を行ったところ、抵抗運動(一揆)が起こった。
結果、富樫政親は自害に追い込まれ、加賀は「百姓の持ちたる国」として領内の住民勢力による自治体制を打ち立てている。
加賀の国はその後、信長に支配されるまで、約100年間も僧侶や信者たちが支配する国となった。
宗教を土台にした戦争や反乱は、いつの時代、どこの国でも非常にやっかいで、一向一揆も「進めば極楽、下がれば地獄」というスローガンのもと信者は命を捨てて戦ってくる。織田信長も、石山本願寺と血みどろの戦いを繰り広げている。
家康が治める三河にも一向宗の信者は多くいて、三河一向一揆が起こった時、家康は弱冠22歳、信長と同盟を結び、三河統一を目指しているときであった。
家康と三河の一向宗の寺院との間で、「守護使不入(しゅごしふにゅう)の特権」についてのトラブルが起こる。
この特権は年貢の免除、警察権・司法権の不介入などの権利のことだ。
これは家康の父、松平広忠が三河の3つの寺院に与えたもので、これら寺院はさらに100以上の末寺を統括する大勢力であった。
税収を増やしたかった若き家康は、この権利を無視して、寺院に兵糧米などを徴収しようとして対立、一揆となってしまったらしい。(諸説あり)
家康はこの戦いに大いに苦戦した。
なんといっても、後の徳川家康の重臣、大河ドラマでは松山ケンイチ氏が演ずる本多正信は、家康を裏切り一揆側の武将として戦っているのだ。
本多正信だけではなく、徳川家臣団の約半分が一揆側についたというから、まさに徳川家分裂の危機であった。
結局家康は、この特権と僧・信徒の助命を条件に寺側と和睦するが、寺が武装解除すると、寺を破壊し、僧侶や改宗しない信者を追放刑にして、その後19年もの間、三河は一向宗禁制の地域となる。
その一方、離反した家臣には寛大な処置をして、結束を強めていったという。
この時の経験で宗教についてはよほど懲りたのか、後のキリスト教の禁教や、すべての人々がいずれかの寺院の檀家となることを強制する「寺請制度」を行い信仰や布教の自由を奪うことになるのだった。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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