失敗や想定外から生まれたものたち
社会・2021-05-27 10:27世の中は思ったようにいかないもの。しかし中には結果オーライのものもある。
1991年、アメリカのメルク社は前立腺肥大症や前立腺癌の治療薬を研究していた。ところが臨床試験に参加した人の中から「毛が増えた」「脱毛が減った」という報告が寄せられるようになり、さらに研究を進め、1997年、ついに発毛に有効な飲み薬『プロペシア』が開発され、男性の半数以上が心ひそかに悩んでいる「ハゲ」「薄毛」から救われた人も多い。
1990年代前半、イギリスのファイザー社は高血圧や狭心症の治療薬の研究をしていたが、なかなかうまくいかない。そこで臨床試験の中止が決定され、薬を被験者から回収しようとしたところ、なぜだか薬を返したがらない。研究者たちが理由を聞くと、被験者は恥ずかしそうに答えた。
「この薬を飲むと、アソコが勃起するんです」
狭心症の薬としては失敗だったが、1998年、世界初の勃起不全治療薬バイアグラができたのである。
1880年頃、薬剤師のペンバートンが、コカインが入ったワインを開発し、活力を与える薬として販売していた。しかし禁酒運動が盛んになったため、アルコール以外のもので、コカインの入った飲み物を開発しようとししが失敗。ただ味は良かったので、助手に冷たい水を入れるようにいうと、助手が間違えて炭酸水を入れてしまった。これが後のコカ・コーラになる。
1922年、イギリスの科学者フレミングが、細菌培養の実験をしていた。その時うっかりクシャミをしてしまい、鼻水がシャーレの中に飛び散った。ところが翌日見てみると、鼻水の周囲だけ細菌が増殖していなかった。
フレミングは、鼻水や唾液には「殺菌効果」があることを発見。この「鼻水に殺菌効果」から後にペニシリンという世界初の抗生物質が作られるのだが、ペニシリンも抗生物質も、その後何千万何億人の命を救うことになった。
これらの例を見ると、失敗や想定外も必ずしも悪いことじゃない。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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