なぜ日本でキリスト教が広まらないのか?

社会・2020-12-23 15:35
なぜ日本でキリスト教が広まらないのか?
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年の瀬がせまり、街にはクリスマス・ソングが流れるようになった。この国でクリスマスの日にケーキを買ってお祝いする家庭も少なくないことだろう。

だが不思議なことに、クリスマスはお祝いするのに、キリスト教を信仰している人が驚くほど少ない。人口の約1%程度しかキリスト教徒がいないのだ。
明治時代にキリスト教の禁教が解け、砂が水を吸い込むごとくあらゆる西洋文明を輸入していったというのにである。
太平洋戦争後、プロテスタント大国であるアメリカの文化を国民がもろ手を挙げて吸収していったというのにである。

キリスト教徒は世界人口の33%もいるもっとも人口の多い宗教であるのに、日本人には広まらないのだ。

多くの宗教学者が指摘しているが、日本人には唯一神教の考えがない、日本に仏教が入ってきたとき、日本人は仏教とそれまであった神道と混交させた。16世紀にキリスト教宣教師が入ってきたときも、日本人はキリスト教の神を大日如来と同じと考えた。

日本人の宗教観は、シンクレティズム(混合宗教)と言える。仏教だろうがキリスト教だろうが、いいところを集めて信仰すればいいじゃないかというもの。だから文化庁の調べによると、各宗教の信者数を集めると、1億8200万人以上と日本の総人口を超える。

ちなみにNHKの調査によると、「宗教を信仰していない」(無宗教)49.4%と約半数の人が、信仰を持っていないとしながらも、クリスマスを祝い、初詣に行き、結婚式はキリスト教式、葬式は仏教式というように、いろいろな宗教活動を行っている。

評論家の山本七平氏はこれを『日本教』と呼んだ。日本には仏教や儒教、キリスト教が入ってきたが、日本人の行動様式として、これら宗教の「いいとこ取り」する傾向や、キリスト教の他宗教への排他性が日本人に馴染まなかったのかもしれない。

でもいいじゃないですか。それが日本人。皆様よいクリスマスを。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学教養学部非常勤講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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