世界の資本主義社会はイスラム社会と共存できるのか?
社会・2023-01-15 20:44「今後、世界は資本主義社会とイスラム社会に2分割される」などと言うと、「はぁ?」と、小首をかしげる方も多いだろう。日本にはイスラム教徒(ムスリム)は極めて少ないが、世界を目にすると風景は変わる。
中世の場合、ユーラシア大陸の覇権国は、中華帝国とイスラム帝国であった。
ヨーロッパはインド帝国や中華帝国と商売がしたかったが、その間にイスラム帝国があるため、なかなかインドや中華にたどり着けない。
それで仕方なく、海路アフリカの喜望峰をぐるりと回って、インドにたどり着いた。あるいはインドに行きたくてアメリカ大陸を発見した。
これが大航海時代である。
ヨーロッパ人は遠洋航海の技術と鉄砲など高度な武器を手にして、アフリカや東南アジア、インド、南北アメリカなどを支配することができたが、中世においてはイスラム帝国と中華帝国には手が出なかった。
イスラム帝国の没落は、第一次世界大戦のオスマン帝国の消滅まで待たなけばならない。
オスマン帝国はヨーロッパの連合国に負けたが、イスラム社会がなくなったわけではない。
イスラム社会は、他の多くの国と違い、キリスト教がさほど浸透せず、それどころか、イスラム教徒の人口は
1900年は、世界人口の12.3%
1950年は、世界人口の13.6%
2017年は、世界人口の24%
と増え続け、いまや世界人口の4分の1がイスラム教徒なのだ。
そしていまもイスラム教徒は世界で増え続けている。
宗教人口が世界一のキリスト教徒が減り続けているのと対照的といっていい。
イスラム教はキリスト教と違い、他宗教に寛容であり、教組のムハンマドが商人であったせいか、経済活動に熱心である。
ただし欧米の資本主義と違い、経済活動より宗教活動を第一としているところだ。
いまや共産主義はソ連崩壊に代表されるように失敗であったことが証明され、中国も資本主義を取り入れた。
資本主義は資産の個人所有だが、イスラム社会においては神の所有のもとにある。
かといってイスラムでは金儲けは正しい。昔の日本やキリスト教社会の貴族や武士には、お金を扱うのは、卑しいことという思想があったが、イスラム社会にはない。儲けた金の一部は貧民や公共施設に「喜捨」や「寄進」を行う。喜捨すればするほど神が喜ぶのだ。
資本主義社会とは、思想が大きく違うのだ。
さてイスラム教というのは、一見戒律が厳しそうなのになぜこうも信者が増えているのか?
いろいろ調べてみると、案外楽であるらしい。
自分が成功しようが失敗しようが「インシャアッラー(神が望むなら)」とすべて、神の思し召しと責任は神にあるとする。よって自分の失敗を責めない。さらに競争主義の資本主義社会と違い助け合いが教理にある。
その一方、中国のイスラム教徒は「共産党よりも宗教が大事する」として弾圧されている。欧米の資本主義社会においてもイスラム教徒の難民や移民が問題化している。
2030年にはキリスト教の信者数を超え、2050年には世界人口の3分の1以上になるという。
日本のイスラム教徒は約20万人なので、日本人にはピンとこないかもしれないが、そのとき世界の資本主義はイスラム教と共存できるのだろうか? それとも新たな混乱を生むのだろうか?
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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