ストーカー殺人の理不尽さ ストーカー加害者の異常性

社会・2023-01-21 18:50
ストーカー殺人の理不尽さ ストーカー加害者の異常性
閉じる

またしてもストーカー殺人が起こってしまった。JR博多駅近くの路上で女性会社員が、元交際相手の男によって刺殺されたのだ。
福岡県警はストーカー規制法に基づく対応をしていたというが、殺人を防ぐことができなかった。

ストーカー犯罪は被害者がとても理不尽な立場に追い込む犯罪でもある。
今回の事件の場合、被害女性が警察に何度も相談をしている。

それに対する警察の指導はどうであったか?

「職場をかえなきゃいけない」「引っ越しをしたらどうか」である。

職場をかえる。引越しをする。どちらも大変なことだ。なぜ被害者が警察に相談して、この程度のことしか言わないのか。実は、現代の「ストーカー規制法」には限度があるのだ。

警察はまず加害男性に事情聴取を行い口頭で「警告」をした。この警告とは、加害者が自発的に問題行動をやめてくれることを期待して行うものだ。

通常、約85%の加害者がこの「警告」で問題行動をやめたというデータがある。
しかし被害女性が、警察に相談したことで、加害男性は余計に逆上したらしい。
「警告」が出た後、何度も電話を繰り返している。

そこで警察はストーカー規制法による「禁止命令」を出した。
この「禁止命令」に違反した場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられ、そこから行為がエスカレートした場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられるというもの。

このとき警察は危険性があるとして、被害女性に「転職」や「引っ越し」など避難をうながしたようだ。
警察は被害者の住所などを重点的にパトロールすることはできても、24時間ガードすることはできない。加害男性を拘束することもできない。

「警告」や「禁止命令」でおよそ9割の加害者が問題行動をやめるが、残りの1割はやめることができない。警察に逮捕されるリスクがわかっていてもやめられないのだ。
こうなってはもはや異常心理と言ってもいい。

中には警察に捕まり刑務所に行って、出所しても相手に執着し、問題行動を起こす人もいるという。
「警告」や「禁止命令」を出しても、問題行動をやめないような相手はかなり危険と思ったほうがいい。

2021年、福岡県で「禁止命令」を受けた12日後女性が殺された。
2022年、三重県で「禁止命令」を受けた11日後の女性が刺殺された。
2022年、福岡県で「禁止命令」を受けた翌日に女性が刺されている。

これらはむしろ「禁止命令」で、加害者が自暴自棄になった例と言える。

ストーカーというのは、一種の異常心理に取りつかれた者だ。カウンセリングや精神科等の治療が必要だろう。しかし人間の心理は治療で変わるとは限らない。

現行の法体制では、いや今以上法律を厳しくしても同様の事件が繰り返し起こるに違いない。
我が国では10人に1人の女性が、ストーカー被害経験があるという。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

関連記事
関連タグ
社会新着記事