武道・格闘技母国日本の不思議

エンタメ・2022-07-20 18:16
武道・格闘技母国日本の不思議
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世界における格闘技の主流は二つ。古代オリンピックが続くボクシングとレスリングだ。この二つの競技は西洋文明が他の文明を呑み込むと同時に、地球に広がっていった。この二つ以外に世界に広がった格闘技はどのようなものがあるだろうか? メジャーマイナー数々あれど、20~21世紀に広まった柔道と空手道の影響は限りなく大きい。

どちらも西洋世界に“東洋の神秘”として知られていくが、最初は柔道からであった。なんといっても20世紀初期、明治時代末期における世界的探偵小説のシャーロック・ホームズも、怪盗アルセーヌ・ルパンも柔道の使い手として描かれているのだ。

手刀で相手の首筋を打つことを、日本では「空手チョップ」というが、むかし欧米では「柔術チョップ」もしくは「柔道チョップ」という名で知られていた。日本において「柔道チョップ」を「空手チョップ」に変えたのは、戦後プロレスの英雄力道山であるらしい。

「柔よく剛を制す」とした柔道は、実際に世界各国に広まり異種格闘技戦にも勝利してきた。柔道以上に神秘的とされたのが空手である。

空手は1970年代から90年代にかけて、熱風のごとくブームを起こした。空手ではないが、中国人カンフースター、ブルース・リーの影響も、限りなく大きいであろう。

ブルース・リーの大ブームは、73~75年あたりからであるが、日本ではその数年前に蹴りを使った格闘技が大ブームとなっていた。キックボクシングである。それは地上波民放各社が、ほぼすべて毎週「キックボクシング」を放送するほどの異常なブームであった。

この時代、空手が世界でいかに憧れられ、怖れられていたか? 例えば情報統制が厳しかったソ連に空手道場ができだした70年代、あまりのブームに柔道やボクシングの選手が軒並み空手に転向したという。

さらに空手の威力を恐れたソビエト当局が、1981年に習うことを禁止し、空手を教えた場合最大懲役5年の刑がくだされたとか。

この柔道や空手を生んだ日本という国は、他にも多くの武道や格闘技も生んでいる。少林寺拳法、合気道、キックボクシングなどだ。これらも世界に広まっている。また日本から強い影響を受けて生まれた格闘技として、ブラジリアン柔術やロシアのサンボがある。

昨今流行りのMMA(ミクスド・マーシャルアーツ、総合格闘技)もまた、日本と深いかかわりがある。戦後、日本の格闘技はプロレスと共にあったといっていい。アントニオ猪木のストロングスタイルから、80年代により実戦的といえるUWFが生まれた。

この時代、極真空手元王者の東孝がフェイスマスクと拳サポーターを使い投げ技ありの格闘空手大道塾起こし、元プロレスラーで初代タイガーマスクの佐山悟が、修斗(シューティング)という総合格闘技の先駆けというべき団体を立ち上げている。

これらは世界にMMAブームが来る前の時代に、日本でブームになっているのだ。柔道・空手・MMAと、どうやらこの国の人は、格闘技に関する大変な先見性をもっているらしい。さて次は何が来るのだろうか?

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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