もしイエス・キリストという人が生まれていなかったら

エンタメ・2022-10-13 18:02
もしイエス・キリストという人が生まれていなかったら
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「バタフライ効果」という言葉がある。「蝶の羽ばたきのように、とても小さな出来事が、最終的に予想もしていなかった大きなことにつながる」という意味である。

およそ2000年前、1人の男が生まれ、十字架の上で刑死した。33歳と言う若さであった。この男、イエス・キリストはパレスチナのナザレという町に育ち、死ぬ前のわずか3年間、自分が信じた神の教えを説いて歩いた。

その新しいユダヤ教の教えは、保守的なユダヤ人の反感を買い、十字架にかけられ死んだ。本来なら、ただそれだけのはずだった。3年間の伝道だから、弟子もそう多くはなかっただろう。いたとしても数千人か、1万か2万人かせいぜいそれくらいだっただろう。

救世主とも言われるイエスだが、彼には代表的な12人の弟子がいた。12使徒である。言い伝えによると、1人を除いてあとは全員刑死したり自殺したりしている。イエスは本当に救い主だったのだろうか?

聖書を読む限りイエス自身は、旧来のユダヤ教通り、ユダヤ人以外に教えを広めるつもりはなかったようだが、イエスの弟子たちは積極的に外国人にも教えを広めていく。

イエスが死んでおよそ300年近く経つと、当時ヨーロッパの中心であったローマ帝国が、キリスト教を国教とし、それまであった伝統的なローマの宗教やローマ帝国が、キリスト教アタナシウス派以外を禁止。それまで続いていた古代オリンピックも禁止され、古代ギリシャから続く哲学や科学も否定され、その知識が失われた。現在、これらの学問が残っているのは、イスラム教徒たちが残していたからだ。

またこのころからユダヤ教を信仰するユダヤ人の迫害がはじまったと考えられる。イエスや12使徒がユダヤ人であったにもかかわらず「イエス・キリストを殺した民族」として。これが後の、魔女狩りやナチのホロコーストに繋がっていく。

キリスト教を国教にして数年後、ローマ帝国は東西に分裂。キリスト教も西のカトリックと東の正教会に分裂した。

やがてカトリック教会は、キリスト教の聖地エルサレムを奪還しようと十字軍を出す。十字軍は200年に渡り計7回も行われたが最終的に失敗。

大航海時代になると、アフリカやアメリカ大陸、インドなどにキリスト教徒が進出。異教徒は殺せという旧約聖書の教えから、先住民を皆殺しにしたり奴隷化した。

カトリック教会の腐敗に憤慨したルターなどがプロテスタントを起こし、宗教戦争が500年も続いた。

キリスト教がなかったら、産業革命も科学革命も起きなかったと考えられている。フランス革命は「神のもとに平等」というキリスト教の教えからはじまっている。そしてキリスト教ほど「神の名のもとに」同じ宗教内で戦争を行い、そして異教徒を殺した宗教はない。

もしイエスが、生まれていなかったら、世界はまったく違ったものになったはずだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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