お金の歴史 物々交換はなかった? お金は信用と幻想
エンタメ・2022-10-13 12:07我々が日々頭を悩ませるのが「お金」。今回はこのお金の歴史について述べましょう。一般にお金は、物々交換からはじまったとされてきました。しかし物々交換は、ほとんどなかったんじゃないかという説が主流になってきているそうです。
まず狩猟採集時代、この時代人々は狩猟にしても木の実の採集にしても、その場その場で消費することがほとんど。一つの群れに獲物を持って帰ると、群れ全体に平等に分配していたようです。狩猟採集民には貯蓄という概念もない。それに交換といっても相手が欲しいものを持っているとは限らない。こっちが持っていなくて、相手が持っていたら略奪すればいい。つまり物々交換は成立しにくいのです。
やがて人類は一定の場所に定住して農耕をやるようになります。すると、いろいろな職業が生まれます。例えば漁民の子どもが熱を出した、薬屋に行って薬をもらう。薬代は何で払うのか? 薬はムギ一袋と3掴みで交換。しかし漁民は魚しか持っていない。薬屋はすでに魚を持っているので、これ以上もらっても腐ってしまう。すると物々交換は成立しません。
そこで何かに記録をとる。「薬代として来月までに、ムギ一袋とムギ3掴み、お礼としてさらに3掴みをお渡しします」。この場合、このお礼が利息ということになります。だいぶ経済的になってきた(笑) この場合、ムギがお金の役割をしているわけです。
さて、お金とは何か?
・価値の保存機能(腐らない)
・価値の交換機能(それでいろいろなものが買える)
・利子を取ることによる自己増殖の機能
この3つのうち1つでもあると、初期のお金と言えます。初期は銀の塊。しかし純度によって価値はバラバラ。そこで権力と信用がある王様が「この純度は吾輩が保証する」と宣言することで、貨幣(お金)が誕生。また、庶民のお金としては、ムギとか塩が貨幣として使われるようになります。
やがて銀塊だと、国家や雇った兵隊や公務員に対して給料を支払うのが大変なので、おなじ純度や重さを国家が保証した銀貨や金貨、銅貨が誕生する。しかしそれらを実際の商売で使うには重いし不便。しかもそれら全財産を手元においておくと、泥棒に狙われるかもしれない。
そこで誰かに利子をつけてもいいから、預かってもらう。銀行の誕生ですね。そして重くてかさばる銀貨や金貨ではなく証文や小切手で代用する。
やがて紙のお金が誕生しますが、これはただの紙を価値があるとして国家が発行し、保証する。なんといっても、ただの紙きれを金や銀と同等の価値をつけるのだから、よほどの「信用」がないと流通しません。1万円札の原価は22円だそうです。我々は22円の紙きれを1万円の価値があると信じているわけです。
これからは、キャッシュレス化によって紙や硬貨も減って来るでしょう。そうすると記録された数字がお金ということになる。お金というのはまさに信用と幻想と言えますね。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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