東大刺傷事件はコロナのせいではない

社会・2022-01-18 10:14

1月15日、東大の入学共通テスト会場近くの路上で、17歳の高校2年生が、受験生2名、と72歳の男性を包丁で刺して捕まった。容疑者の少年は来年、東大医学部受験を目指していたという。

逮捕された少年は「医者になるために東大を目指したが、1年前くらいから成績が振るわなくなり、自信をなくした。事件を起こして死のうと思った」と語っているという。

また少年は包丁の他に、折り畳み式ノコギリやナイフを所持、約3リットルもの可燃性液体を入れたペットボトル3本、ビン8本をトートバッグに入れており、車両や駅で9回も放火しようとして失敗している。つまり大量殺人を狙っていたのだ。

少年を知る人は「すごく頭がいい子」というが、頭がいい子というのは、犯罪など行わないものだ。今回の犯罪は、去年から連続している電車内放火の無差別殺傷事件のモノマネであり、この少年の場合、勉強はできるが頭が良いとは言い難いタイプであったのかもしれない。

事件後、訳知り顔のコメンテーターが「受験のせいだ」「コロナで学校に行けないため、先生や友だちに悩みを話せなかったからだ」と、実にありがちで短絡的な“感想”を発している。

東大刺傷事件はコロナのせいと短絡的に決めつけてはならない。受験やコロナに苦しんでいる児童生徒は、この少年だけではない。むしろ“この少年だけ”が、今回の凶悪犯罪を行ったのだ。

少年がこの犯罪を行ったのは、「受験のせい」でも「コロナのせい」でもない。この少年に責任があるのだ。

そしてこれから、少年がどのような環境で育てられてきたかとか、なぜこのような愚かなことをしてしまったのかなどを、じっくりと調べる必要がある。

どんな時代でも無差別殺人のような凶悪犯罪を行う人が一定数いるものだが、被害者で重傷を負った男性はもちろん、これまでがんばって東大合格を目指していた、二人の受験生被害者が気の毒でならない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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