ゆとり教育は本当に失敗だったのか?

社会・2021-11-16 18:58

かつて過度な詰め込教育の反省から、ゆとり教育という教育法が学校で行われていた。2021年時点の年齢は、16歳~34歳くらいの層がその世代だ。

04年から実施されたゆとり教育には、大きく4つの内容がある。

1.相対評価の廃止
2.義務教育の学習内容を3割削減
3.完全学校週5日制
4.総合的学習の時間の導入

結果としてゆとり教育により、学力低下が起こり失敗だったという意見が多いのだが、それは本当だろうか?

ゆとり教育は02年からはじまったが、03年と06年に実施されたPISA(3年ごとに行われる15歳時点の世界の学力調査テスト)で、日本は大きく順位を落とした。「ゆとり教育は失敗」という人の根拠はこれであろう。

しかし12年行われたPISAのテストでは、ゆとり教育前のレベルに戻っている。文科省が中学の脱ゆとり教育をはじめたのが12年。さらにいうと、15年、18年の脱ゆとり世代は、12年のゆとり世代よりPISAテストの得点が低いのだ。

特に脱ゆとり教育を受け優秀になったはずの子どもが、18年のテストでは、8位から15位に落ちている。

しかしだ、国家的教育の成果は1年や2年で出るものではない。PISAのランキングだけで学力や人間の能力や才能をはかるのにはムリがある。PISAのランキングを上げたければ、PISA用の学習をすれば上がる。それだけのことだ。

ゆとり世代は、バブル崩壊後の不景気、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災と、不幸な時代に育った世代でもあるが、結果が早くでるスポーツの世界では、錦織圭、田中将大、大谷翔平、本田圭佑、羽生結弦とそうそうたるメンバーがいる。全体的なゆとり教育の成果は、まだ先の時代を見ないとわからない。

若者世代と接している人は「ゆとり世代は優秀」と語る人も多い。ゆとり教育は失敗というのは、たんなる中高年の思い込みで、これは古代エジプトから続いている「最近の若者は~」という年寄の定番の言葉に過ぎないのではないだろうか?

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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