我々は人類史上もっとも便利な時代を生きているのに・・・
エンタメ・2023-01-10 19:13ふとスマホやメールがない時代を思い出す。友だちと飲もうと電話で待ち合わせして現地集合。何かの事情で遅れたり来なかったりしたら諦めるしかなかった。思えば便利な時代になったものだ。
1950年代や1960年代はどうだろう。
1955年(昭和30)の段階で、家庭における電話の普及率はわずか1%。 1972(昭和47)年の段階でも30%でしかなかった。
1957年(昭和32)、白黒テレビの普及率7.8%、洗濯機の普及率20.2%、電気冷蔵庫の普及率2.8%である。
テレビ、洗濯機、冷蔵庫は昭和の「三種の神器」と言われたが、これらは60年代に急速に普及する。「はじめて洗濯機が家に来たとき、おばあさんが両手を合わせて拝んだ」という話を聞いたことがある。それまで真冬でも素手でゴシゴシと洗っていたのである。洗濯機は拝むほどありがたいものであったのだろう。
旅行はどうだろう、江戸時代は江戸から大阪まで14日間、明治時代にはじめて東京神戸間に鉄道がとおったがそれでも20時間かかっている。
それがいまでは東京新大阪間2時間30分だ。
食べ物はというと、現代では24時間コンビニが開いていて、あらゆるものがそろっている。
「セブンイレブン」というコンビニがあるが、最初は朝7時から夜の11時までの営業であり、それでも夜11時まで開いているというのは店名にするくらい衝撃的なことだったのだ。
少なくともいまの日本では飢えて死ぬ心配はとても低い。
それどころか若い女性はダイエットのため、飢餓寸前であった終戦直後よりも少ない摂取カロリーで暮らしているという。
その一方、中年男性は食べすぎによる糖尿病が増加中だ。
間違いなく現代社会は人類史上もっとも便利で贅沢な生活をしている。
老人たちは「昔は良かった」「昔はストレスなんてなかった」というが、それは記憶の塗り替えにしか過ぎない。
彼らが懐かしがる昭和30年代はいまより凶悪犯罪が何倍も多い時代であった。凶悪犯罪が多い時代がいい時代であるはずがない。
バブル景気を懐かしがる声もあるが、長時間労働は当たり前で過労死は無視されていた時代でもあるのだ。
昔に比べ、現代社会は日本史上もっとも安全で安心して生きていける社会であり、ストレスが少ない「はずの」社会なのだ。
それでも我々何となく「生きづらさ」のようなものを感じ、年間2万人もの人が自殺する。
実はまだ人口が4千万人程度の明治37年(1904)でも9千人近い人が自殺しているのだ。
人は貧しくても豊かでも、不安を感じてしまうものらしい。
ほんの数十年前に比べても、我々ははるかに便利な時代を生きている。あとはいかにこの便利さを利用し「楽しく生きる」ことを目指すべきではないだろうか?
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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