文字はいつなぜ誕生したのか?

エンタメ・2023-01-05 20:44
文字はいつなぜ誕生したのか?
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約7万年前、我々人類ホモ・サピエンスは認知革命を起こした。爆発的に頭が良くなったのだ。言葉を覚え、絵を描くことを知った。

それからなんと、6万年以上の間人類は文字を発明しなかった。なぜか?
簡単な話、必要なかったからだ。
彼ら狩猟採集民は、数十人の群れで移動生活をしている。捕った獲物など食料は、平等に群れ全員に配るという原始共産制であった。

平等に配られるわけだから、群れの人間間に貸し借りはない。よってそれらを記録する必要はない。もしあったとしてもそれは記憶できる範囲のものであったはずだ。

人類に文字が登場するのは、狩猟採集の移動生活を捨て、農耕生活をはじめるようになり、人口と生産力が増え王国が生まれた頃だろうと考えられている。
人が増え、莫大な量となったムギなどの農作物を再分配するためには、脳以外の場所に記憶を共有する記録が必要となり、文字が発明されたのだろう。

おもしろいのは、文字の発明とお金の発明が似ていることだ。
お金のはじまりも記録なのだ。よくまず物々交換があって、それだと不便だからお金が生まれたと言われてきた。

しかしどうも違うらしい。例えば、狩人が鹿を射止めたので、漁師に脚一本とサカナ20尾と物々交換しようとした。しかしその日漁師のところには魚はない。物々交換がなりたたない。
これが魚だけならいいが、ムギ、野菜となってくると、いつ誰にどれだけ鹿の肉を渡したかわからなくなってくる。当然、記録が必要になる。

そんな記録よりも、共通価値のあるもの、金のつぶや銀のつぶ、塩、めずらしい貝をお金として、交換に利用したほうがいい。

最初は共通価値があるものが、お金として使われていき、やがて金貨や銀貨が流通するようになると、金貨や銀貨をたくさん持っている人が「お金持ち」となる。
しかし自分の屋敷にそれら金や銀を貯めていくと、どろぼうに狙われる危険性もあり、持ち運びも大変。

だったら誰かに利息を払っても預かってもらえばいい。そこで預かった人は預かり証明書を発行する。この証明書が紙のお金のはじまり。
ただの紙きれが、証明書に書かれた金や銀と同じ価値があるとされるようになった。

話がそれた。文字のはじまりである。文字は一瞬で消える言葉をいつまでもとどめることができる。さらにもっとも大きな影響は、知識の継承である。

人類は言葉を獲得し、その言葉を記録する文字を発明することで、いまに繋がる文明を発達してきたと言っていいだろう。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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