ヒトはなぜ性行為を特別視するのか
エンタメ・2023-01-02 18:01ヒトには三大欲求というものがある。食欲・睡眠欲と性欲だ。
この中で「性欲」だけが特別扱いをされている。
おおやけに性について語ることはタブーであり、そのため学校での性教育はすすまない。
子どもはやっちゃダメと言われ、障がい者や老人の性を語ることは多くの人がうつむく。
おそらくヒト以外の動物で、相手に高い報酬を与え、自分が縛られ鞭で打たれてコーフンする動物は他にいまい。
とにかく性行為というものは「制約」が多いものだ。
「正常位」という体位がある。もしこれが「正常」であるとすると、他の体位は「異常」ということになる。
「正常位」は英語で「ミッショナリー・ポジション」という。
「ミッショナリー」とはキリスト教の宣教師という意味だ。
これは牧師や神父のような宗教指導者が「正常位」以外の体位を動物的であるとして、禁止したことにある。
中世ヨーロッパのキリスト教は「性行為」による快楽をとても憎んだ宗教なのだ。
しかし「性行為」なくして子どもは作れない。
そこで教会は「結婚していれば、子作りのための性行為はOK」と説いた。
体位は正常位のみ、快楽の追求なんてもってのほか、肌を触れ合うのも快楽だから、できればシーツに穴をあけて、性器同士の結合だけにしなさいと。
まるで笑い話みたいだが実際そう指導していた。ちなみに自慰行為も禁止である。
キリスト教だけではなく、仏教も浄土真宗以外の僧侶の性行為(結婚)は修行のジャマであり「女犯(にょぼん)」とされ、やってはいけないこととされていた。
実際は、明治時代になって新政府が僧侶の結婚を許可すると、別に宗教行為なので、許可されたからといっても、結婚などしなくていいのに、どんどんお坊さんたちは結婚しちゃうのである。
実際、暗黙の了解で、坊さんたちには元々愛人や子どもがいたし、こっそり岡場所にも通っていた。
信長の比叡山焼き討ちのときも女人禁制なのに、たくさんの女子どもがいたというし、ローマ教皇も代々愛人がいて、その子どもが教会で出世したりしたという。
ヒトにとって、性行為は禁止したくなるほど魅力的なものであり、魅力的なものであるからこそ、お盛んにやっている男女は「乱れている」「社会的に許されない」ということになるらしい。
逆に言えば、社会的にダメとされている方が「その気」になるものらしい。
多くの男性は裸の女性に性的興奮をするが、もし法律で女性は全裸でなければならないとなったら、最初は興奮するかもしれないが、たちまち飽きて裸を見ても反応しなくなるだろう。
禁止されているからこそ、やりたくなるのが性行為というものであり、性の制約は、我々が性行為を行うための装置なのだ。
最後にマーク・トウェインの名言を一つ。
「アダムはリンゴが欲しかったから食べたのではない。禁じられていたから食べたのだ」
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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