先輩後輩関係という身分制度

エンタメ・2021-10-23 18:11

現在の日本文化のひとつに、学校の運動部や職場における先輩後輩という身分制度がある。欧米で日本のアニメを放送するとき、先輩に相当する言葉がないため「センパイ」と日本語のまま放送しているという。

当たり前だが、欧米にも年長者を敬う文化はある。スポーツクラブや職場でも、先輩から教わることからはじまるからだ。だからといって、日本の運動部のように「1年奴隷、2年人間、3年殿様、4年神様」などというものはない。

元外務官僚で作家の佐藤優氏によると、官僚の世界は「年次がすべて」で、一期でも早く入省した職員と、新入職員との差は大学の体育会どころではなく、将校と新兵くらいの差があるそうだ。

江戸時代、武家の世界でも商人の世界でも、先輩が偉く後輩は無批判に先輩の言うことを聞かなければいけないということや、年功序列というものはなかった。

先輩・後輩という伝統は、明治6年にはじまった徴兵制にあるという。軍役は3年間あり、そのときに「初年兵は奴隷・二年兵は鬼・三年兵は神」という序列ができた。その悪習が戦後700万人もいた復員兵から一般企業へと伝わった。

戦前・戦中のサラリーマンは、実力主義であったのが、年功序列となり、終身雇用制となった。時に高度成長の好景気。年齢や勤続年数に応じて、役職・賃金を上昇させる年功序列人事が行われるようになった。

高度成長の時代はそれで良かったのかもしれないが、バブル崩壊後の不景気な時代では、年齢を重ねただけで高級を取る社員はリストラの対象となる。

先輩後輩という体育会的な身分制度を好む人も多くいるが、中には1年や2年早く生まれただけで、先輩の言うことは絶対というような、理不尽な世界はまっぴらだという人も多い。

日本独特の先輩後輩における身分制度は、いまなくなりつつあるのかもしれない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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