【幕末】歴史から消された男 小栗上野介とは何者か
社会・2021-07-23 10:18小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)といっても、知らない人も多いかもしれない。NHK大河『晴天を衝け』で武田真治が演じている幕臣、あるいは徳川埋蔵金を隠した男と言ったら「ああ」と思う人もいるかもしれない。
勘定奉行など幕府の要職を歴任。おそろしく頭が切れ、遣米使節として渡米、ブキャナン大統領に謁見、さらに米国に有利であった通貨の交換比率を公平に改める交渉を独断で行い成功。
日本最初のカンパニーを作り、最新兵器の国産化や、アジア最大の造船所をも作る。この造船所がなければ、日露戦争のとき日本は軍艦を作れず敗れていたであろうと言われるほど、後世への影響も大きい。
というよりも小栗上野介がいなければ、明治新政府がどうなったかもわからない。第8・17代内閣総理大臣となった大隈重信はこう語っている。
「小栗上野介は、謀殺される運命にあった。明治政府の近代化政策は、そっくり小栗のマネに過ぎなかったからだ」
徳川最後の将軍慶喜が大政奉還し、幕府軍が新政府軍に鳥羽伏見の戦いに敗れ、江戸に向かって進軍してきたとき、小栗には起死回生の作戦があった。それは、幕府の最新艦を使い、駿河湾で新政府軍を迎撃するというもの。
後に日本陸軍の祖と言われた天才軍師大村益次郎にして「この作戦が実行されていたら、新政府軍は壊滅していた」と、言わしめるほどのものであった。
しかしこの作戦は実行されず江戸開城、小栗は知行地高崎に隠棲を決める。
新政府としては、徳川末期に徳川近代化の青写真をすでに作り、もし徳川慶喜が新政府に恭順せず、小栗に幕府軍の指揮をさせていれば、ほぼ間違いなく幕府軍が勝ったであろうと言われた男。
そんな天才を、新政府は怖くて仕方がなく、取り調べもせずに処刑し歴史から消そうとしたという。徳川埋蔵金の噂も、新政府が小栗を賊徒にするためのデッチあげと言われている。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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