中国・韓国だけじゃない。日本人もワンちゃんを食べていた

社会・2022-10-25 18:01
中国・韓国だけじゃない。日本人もワンちゃんを食べていた
閉じる

ときどき「中国人や韓国人はイヌを食べるから~」とフンガイしている人をネット上で見かける。しかしそういう人も、日本人は昭和時代までイヌを食べていたことを知ったら、どういう顔をするのだろう?

いまでも犬食があるのは、中国・朝鮮半島・東南アジアといった地域。イヌを食べないのは、欧米人やモンゴル人。なぜか? 放牧や遊牧、狩猟の民にとって、牧羊犬や狩猟犬として役に立つ家畜なのだ。「イヌは友達」と言っていい。

一方、中国・朝鮮半島・東南アジアは稲作など農耕中心の民族にとって、イヌはたいして役に立たない家畜。農業をやっていると、食べる物が偏りたんぱく質不足になる。じゃあイヌで食べて精をつけるかとなる。

日本人は明治時代になるまでウシを食べなかった。なぜか? 昔の人はウシを土間の横など家の中で飼っていた。文字通り「ウシは家族」だったのだ。イヌはというと、昔は放し飼いか、外の犬小屋でロープにつながれて飼っていた。この大きな待遇の差は、ウシは物を運搬してくれたり、トラクターの代わりになり、糞は肥料になる。

ぶっちゃけた話、遊牧民や狩猟民は「イヌは食べるより死ぬまで使ったほうがお得」、日本の農民にとって「ウシは食べるより死ぬまで使ったほうお得」なのだ。

さて、日本人の犬食である。

戦国時代にポルトガルからやってきた宣教師のルイス・フロイスは、日本人の肉食について次のように書き残している。
「ヨーロッパ人はメンドリやウズラ、パイ、ブラモンジュ(冷菓の一種)などを好む。日本人は野犬や鶴、大猿、猫、生の海草などをよろこぶ」

と、イヌやサルを食べていたことが記されている。

江戸時代の料理書『料理物語』にはイヌの吸い物を紹介する記述があり、江戸時代の政治や文化を記録した書物には、「江戸の町方に犬はほとんどいない。武家方町方ともに、江戸の町では犬は稀にしか見ることができない。犬が居たとすれば、これ以上のうまい物はないと人々に考えられ、見つけ次第撃ち殺して食べてしまう」とある。

どうやら日本人が犬を食べなくなったのは、ほんの最近の話らしい。戦後のしばらくは当たり前のように犬を食べていた。日本人はイヌを食べていたと思いたくない皆さんも、こういう言葉を聞いたことがあると思う。「犬は赤犬がおいしいらしい……」

筆者個人も、イヌを食べた人物を何人か知っている。1人は高名な柔道家で、学生時代に柔道部と剣道部が一緒になって大学付近でイヌ狩りをして焼いたり鍋にして食べたりしたという。

また知り合いの漫画家は。子どものジョンというスピッツの雑種犬を飼っていたのだが、ある晩スキヤキが出た。翌日、ジョンを散歩に連れて行こうとしたら、ジョンはおらず犬小屋の周りにジョンの白い毛が散乱していたそうだ。どちらも昭和40年代の話である。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

関連記事
社会新着記事