高齢者の犯罪が増加中のなぜ?

社会・2021-05-14 18:40
高齢者の犯罪が増加中のなぜ?
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「70歳男 車を幅寄せし殺人未遂疑いで逮捕 」
「ワクチンの予約断られ 66歳の男病院のガラス蹴り割る」

などなど、最近は高齢者が犯罪を行ったというニュースをよく見る。実際のところはどうなのだろうか?

『日本民営鉄道協会』の発表によると、駅員や乗務員への暴力行為で一番多い年代は、60代以上であるそうな。いまや「荒れる十代」ではなく「荒れる老人」の時代なのかもしれない。

さらに『令和2年版警察白書』によると、2019年における全刑法犯の認知件数は約74万8,000件で戦後最低を記録する一方、検挙される高齢者は増加。検挙人員数全体の22.0%、およそ5分の1が高齢者だ。

ちなみに1989年だと、高齢者の検挙者は全体のわずかに2.1%。いまでは22.0%。ここ30年で高齢者の犯罪が大きく増えていったと言える。

では高齢者たちはどんな罪を犯して検挙されているのだろうか? それは窃盗が約7割、そのうち約8割が万引きである。高齢者の万引きは他の年代と比べてもダントツに多いのだ。他には暴行が高い増加率を示している。

ではなぜ万引きをする高齢者が多いのであろう? それはスリルを楽しむなどと違って【生きるため】である。

『高齢者による万引きに関する報告書』によると、検挙された高齢者の約8割が無職であり、犯行動機3割が生活困窮のためであり、「お金を払いたくないから」も約3割であった。他の調査では盗んだ品物の7割が食料品という報告もある。

また孤独な高齢者に万引き犯が多いという。

孤独で生活に困窮した老人が万引きで捕まる。捕まったからといって、生活が改善するわけではないので、何度も再犯を繰り返しやがて刑務所に行く人も多い。そして出所しても再犯し再入所する老人も多いのだとか。

世界的に見ても、高齢者犯罪の増加が問題視されているのは、日本くらいであるそうな。

鉄道で一番暴力行為をするのは老人。生活苦で万引きを繰り返すのも老人。なんとも悲しい話である。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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