多国籍企業が日本の農業を支配しようとしているだって⁉

社会・2021-05-11 18:21
多国籍企業が日本の農業を支配しようとしているだって⁉
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「モンサントって会社が日本の農業や食を支配しようとしているって知ってた?」

ある日、知り合いから唐突にこんなことを言われたことがある。なんのことかと思っていると、世界最大の農薬や種苗の多国籍企業であるモンサント社が、日本中のタネを支配しようとしているというもの。

作物のタネと支配するということは、食べ物を支配するということであり、ひいてはその国を支配するというであるらしい。

ところがモンサントという会社は、世界を支配するどころかバイエルという会社に買収されており、いまは消滅してしまっている。

どうも話の出どころは、2018年4月に主要農作物種子法が廃止されたときに、民主党時代の元農水大臣の山田正彦氏が言い出したことらしい。

なんでも山田氏によると、種子法が廃止されると、モンサントをはじめとする海外種苗メーカーによって日本の主要農作物の種子市場(例えばコメ)が支配されるということらしいのだが、種子法廃止から3年たったいまでも、もちろん支配などされていない。
むしろよくこんな陰謀論を信じている人が農水大臣をやっていたなと驚くと同時にぞっとする。

もともと種子法というのは、終戦直後の食糧難の時代に米、麦、大豆の安定供給のために試験して通ったコメ等を奨励品種として農家に作ってもらっていたわけで、食料不足がなくなった現在、この種子法は無用の長物だったのだ。

種子法だけではない。日本は農業生産額が世界8位、先進国では2位という農業大国であるが、農業についての知識を持つ人は少なく、食の安全への不安を煽るマスコミは後を絶たない。

最近でも「れいわ新選組」の山本太郎氏が、同じ陰謀論を語っている映像を観た。陰謀論というのは、不安や恐怖を煽って、相手に信じ込ますものだが、政治家が陰謀論を妄信することほど怖いことはない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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