硫酸男が取り憑かれた「ネガティブ反芻」

社会・2021-09-01 20:49

8月24日、東京メトロ南北線白金駅で、「タメ口をきかれ気に入らなかった後輩」に、硫酸をかけて逃走した男が捕まった。

容疑者は被害者の住所を調べるために、在学していた沖縄の大学まで名簿を調べに行くなど、かなり粘着した行動をとっていたことが報じられている。まるで悪質なストーカーだ。

おそらく単純に「タメ口をきかれ気に入らなかった」からだけではなく、他にも何らかの不満や恨みがあったと思われるが、少なくとも加害者は、「気に入らない後輩」のことを、ずっとずっと一日中、それも何日も、もしかしたら何年も、繰り返し思い出し、考え続けていたに違いない。まるで片思いの相手をずっと想いつづけるがごとく。

おそらく多くの人にも似たような経験があるかもしれない。「気に入らない人」「嫌いな人」のことが頭から離れない。

思い知らせてやりたい。

復讐したい。

容疑者はその想いを実行し、一生をフルスイングで棒に振ってしまった。なんという愚かで、時間と労力の無駄であろうか?

人間心理には「返報性の原理」というものがある。何かしてもらったら、お返ししなきゃと思う心理のことだ。これは善意だけではなく、悪意にもある。

さらにぐるぐると、恨みや失敗など悪い感情を繰り返し考えてしまうことを、心理学では「ネガティブ反芻(はんすう)」という。おそらく容疑者は、このネガティブ反芻という魔物に取り憑かれてしまったのであろう。そして愚かな行動に出てしまった。

もしあなたが、悪意の返報性とネガティブ反芻という妖怪に取り憑かれそうになったら【自分が無駄な時間と労力を使っている】ことを自覚し、相手との心の距離を取ることだ。

硫酸男を反面教師とし、決して彼のような愚かな真似をしてはならない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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