至誠の人? それともテロリスト? 吉田松陰の「狂」
社会・2020-10-27 19:3710月27日は明治維新に大きな影響を与えた吉田松陰が斬首された日である。
現在でも松陰を尊敬している人は多く、松陰の生き様や言葉をしるした本がときどきベストセラーになるほどだ。そんな吉田松陰のイメージは、至誠の人のような印象が強いのではあるまいか?
確かに松陰の生涯を追っていくと、至誠の人でありそして過激な人でもあった。今回は松陰の過激さにスポットを当ててみたい。
長州藩に生まれた松陰は、21歳のとき、友人たちと東北旅行を計画する。しかし手形(パスポート)が手に入らず、たかだか友人との約束を守るために脱藩、犯罪なので当然、帰省後に士籍剥奪・世禄没収の処分。
ペリーが2度目の来航のときは、米国に渡航しようと小舟を盗んで黒船に乗船しようとするも失敗。これは外交問題もかかわるので、幕府から死刑にすべしという声もあったという。
その後、長州で服役。やがて自宅謹慎となるが、このときから松下村塾で過激思想を教えだす。
やがて幕府の老中・間部詮勝の暗殺を計画し、その実行のため、素直に藩に武器・弾薬の提供を願い出て逮捕、服役。
当然のことでこんなことが計画されているということが、幕府にしれたら、最悪の場合、お家お取り潰し。しかし幕府に知れちゃうのです。
そのとき松陰は、江戸の評定所(裁判所)にいた。
これは松陰の罪を問うというものではなく、幕府が別件捜査の参考人として松陰を江戸に呼んだのである。しかし松陰、なぜかこのとき、聞かれてもいない老中暗殺をべらべらと喋りだしたのだ。
そして今度こそ死刑。松陰が松下村塾で教えたのはわずか2年あまりであった。しかしわずか2年間だが、松陰に教育を受けた若者たちは、後に江戸幕府を終わらせ、政治政府の主軸となっていくのである。
幕府側から見れば、松陰はテロリストであっただろう。そして松陰無くば明治時代が来たかどうかわからない。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学教養学部非常勤講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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