昔の日本人は生卵を食べなかった?
エンタメ・2021-07-04 10:03いまや専門店ができるほど人気のTKGこと、卵かけご飯。この卵かけご飯がいつから食べられるようになったかというと、戦後になってからだと考えられている。
江戸時代には、卵かけご飯の記録はなく、初めて卵かけご飯を食べたのは、明治5年、新聞記者であり実業家でもあった岸田吟香であるとされており、周囲にも勧めたというが、卵の生食は広まらなかった。
そもそも生卵を食べる民族は、おそらく世界で日本だけであろう。欧米でも中国でも生卵は気持ち悪いなもので、映画『ロッキー』で主人公がロードワーク前に、数個の生卵を一気飲みするシーンがあるが、外国人から見ると相当気持ち悪いことで、主役のシルベスター・スタローンは別枠で、法外なギャラを要求したとか。
世界の人たちが生卵を食べない理由はカンタンで、卵というのはニワトリの卵管から出てくるのだが、卵の出口は肛門と一緒になっている。つまり非常にフケツなわけ。
とくに食中毒の原因となるサルモネラ菌が卵の殻にウヨウヨとついていて、超絶にキケン。
さてさて、こんなキケンなものを生で食べるなんて狂気の沙汰。それは日本も同じで、昔の日本人も生卵は食べなかった。食べるようになったのは、鶏卵が大量生産されその卵を出荷前に殺菌し、安全性が担保されてからなのだ。
ただし、戦前にすき焼きに生卵をくぐらせて食べるというのはあったらしい。ただしその卵が養鶏場で殺菌されていたかは不明。
日本人が鶏卵自体を食べるようになったのは、戦国時代にやってきた南蛮人の影響で、宣教師ルイス・フロイスによると、当時の日本人は牛肉と同じく鶏卵も嫌悪して食べなかったが、最近は秀吉も食べるようになったという記録がある。
卵はかつて高級品で、江戸時代から戦前まで今の値段でいうと、一個400円くらいした。それが戦後になって、昭和30年代でも一個200円くらいであった。昔はそうそう卵かけご飯にできる食材ではなかったのだ。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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