人類と肉食のふか~いカンケイ

エンタメ・2022-09-17 18:04
人類と肉食のふか~いカンケイ
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いま、健康のためお肉を食べないようにする人たちが増えているそうです。ただ、人類と肉食は実にふか~いカンケイがあるのです。

まず数百万年前、初期人類が森を捨て草原に出てきて、死肉あさりをするようになります。するとアラ不思議、栄養価の高い肉を食べることで人類の脳がどんどん大型化していくではありませんか。頭が良くなった人類は、やがて自分よりも大きな動物を狩ることができるようになります。

旧石器時代の食事を研究しているS・ボイド・イートンとメルヴィン・コナーによると
「人類の歴史の大部分、われわれの身体は、1日に約788グラムの赤身の肉を消費するよう適応していたということである。この量は、現在のアメリカ人が消費する牛肉、豚肉、羊やヤギ肉の総量の、1人あたり平均消費量の4倍である」
(宮崎正勝.知っておきたい「食」の世界史(角川ソフィア文庫)より引用)とのこと。

現代日本人の食肉量は1日約80グラムですから、原始人がいかに肉を中心とした食事をしていたかがわかります。というか人類はほとんど肉食動物だったわけです。なぜそうなったかは、人類にもっとも近いチンパンジーを観ればわかります。彼らは、木の実や葉っぱなど植物性の食べ物が中心。植物性の食べ物は咀嚼や消化に時間がかかり、チンパンジーは1日のうち約5時間咀嚼をし、食後は消化のため2時間の休息をとります。

しかし肉はそれほど咀嚼も消化も時間がかからず、さらに火を通すことでもっと消化吸収しやすくなります。人類は焼いた肉を食べることにより、口や胃腸が小さくなり、その分の栄養を脳に回して進化してきたのです。

やがて1万年前に氷河期が終わり、人類は農耕という技術を持ちます。すると穀物の偏食から、人類の身長は低くなり、虫歯や骨粗しょう症が増えていきます。近代日本でも戦国時代くらいまで、獣肉を食べていて、江戸時代になるとあまり食べなくなりました。その結果、幕末の頃が日本人のもっとも体が小さい時代だったようです。

またヨーロッパは肉食のイメージが強いですが、19世紀くらいまで貴族や富豪以外大変なご馳走でした。例えば中世のイギリスではたくさんの羊を飼っていましたが、別に食べるためではありません。羊毛をとるためです。そのため羊を食べるのは、羊が死んだときくらいでした。

18世紀末に起こったフランス革命は「パンをよこせ」という掛け声ではじまりましたが、パンの何倍も高い肉など庶民にはとても手が出せないものだったのです。

ヨーロッパでは20世紀になり、鉄道など流通が発達し、合理的な畜産ができるようなってようやく庶民も気軽に肉を食べることができるようになりました。

人類は肉を食べることで進化し、農耕の出現で肉食と遠ざかり、現在になってやっと普通に肉食ができるようになったとき、健康などの理由で肉食から遠ざかろうとする人が出てきた。食肉の歴史とは面白いものですね。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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