日本の幸運とスクラップ&ビルド

エンタメ・2022-09-14 18:58
日本の幸運とスクラップ&ビルド
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海外の歴史と比べると、日本はとても運がいい国と言える。ちょっと不思議なくらいだ。鎌倉時代、世界最強のモンゴル帝国「元」のフビライ・ハンが2度にわたり侵略してくるも、これを撃退することができた。これは日本の武士団がよく戦ったというのと、元は3度目の蒙古襲来を予定したが、中国南方やベトナムで反乱が起き、さらにフビライが亡くなって助かっている。

中華帝国やヨーロッパの場合、「城郭都市」という漫画「進撃の巨人」の町のように町を丸ごとすっぽりと城壁で囲ってしまう。それだけ、異国・異民族・異教徒からの攻撃を恐れたのだ。中華帝国は異民族を恐れるあまり、万里の長城を作ったくらいだ。

日本の場合、異民族の侵略はほとんどなく、城の周りに堀を作る程度であった。これは日本が四海を海で囲まれた島国であるという幸運から異民族が侵入しづらかったからだ。

日本に比べて海一つへだてた、朝鮮半島は、常に陸続きの騎馬民族や漢民族の侵略にさらされていたのと、大きな違いがある。

戦国時代に入ってきたヨーロッパ人は、まずキリスト教を広めてから武力で侵略するという方法をとっていたが、秀吉・家康がキリスト教禁止令を出し、日本の侵略はならなかった。世界中がヨーロッパ人に踏みにじられている間、日本は270年という長い間、徳川政権のもと太平の時代を過ごした。

その太平が破られたのがペリー来航に代表される西洋列強の黒船が続々とやってきた幕末期である。日本人はスクラップ&ビルド、徳川幕府という古い体制を破壊し、明治政権という新しいものに作り替えることに成功している。

この明治維新も、先にアヘン戦争というイギリスの侵略戦争から学習できたという幸運があったからだ。

明治政府は、やがてロシア帝国と戦争をすることになるが、このときも運が良かった。日露戦争中第1次ロシア革命が起こったのだ。大日本帝国は紙一重、ギリギリのところで勝利した。

しかし太平洋戦争では、ボロボロに負けた。太平洋戦争敗戦後、日本は、明治維新のときと同じくスクラップ&ビルド、破壊と再生に成功する。それには朝鮮戦争特需という幸運があったからだ。1951年の名目GDPはプラス38%、1952年はプラス12%、1953年はプラス15%という景気の良さである。ほんの数年前は国民の3千万人もが餓死するかもと言われていたのにだ。

またベトナム戦争特需も高度成長期を後押しした。ベトナム戦争終結前に高度成長期は終わるが、そのころには、敗戦のダメージからほぼ完全に復活し、日本は安定成長期を送ることになる。

日本という国は、ふしぎなほどの幸運でこんにちがある。しかしいまの日本はスクラップになりつつある。はたしてまた再生はできるのだろうか?

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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