お嬢様言葉がブームらしい。でもそれは元々下品な言葉だった?
エンタメ・2022-09-21 15:16「お嬢様言葉」が一部の女子に流行っているらしいのです。いわゆる「~ですわ」「~なくってよ」などなど小説やドラマの中で上流階級のお嬢様がお使いになるお言葉で、「てよだわ言葉」と呼ばれています。
「てよだわ言葉」のはじまりは、明治時代にお嬢様たちがお通いになられた女学校だと言われております。
明治時代は新時代とも言われますが、言葉も大きく変化した時代でもあります。それより前の江戸時代の共通語は、「武士言葉」でした。江戸時代は300諸侯が、江戸屋敷を持ち、武士同士が交流しました。そのとき方言を使っていたら、話が通じないので「~でござる」「それがしは存ぜぬ」という武士同士の言葉を使ったのです。
ただ、それは武士のみ、庶民には共通語などなく、もし「お尋ね者」が逃走すると、役人は「どこそこのお国言葉を喋る者」を探して追っていったといいます。
しかし明治新時代、富国強兵を目指すには、共通の言語が必要となり、「東京の山の手言葉を標準語の基盤とする」という方針が打ち出されました。
やがて山の手の上流階級夫人の「ごきげんよう」「ざます」「あそばせ」といった東京山の手方言が使われるようになり、さらに女学校というお嬢様だけのコミュニティが生まれると、現代の女子高生の流行語のように使われていたようです。
流行語というのは、いつの時代でも上品な言葉とは見なされないものです。
特にこの言葉は、神楽坂など山の手の芸者や、山の手の下層階級の女性が使う言葉であったのです。当然、女学生が使うと「下品」「はしたない」と批判が起こったと言います。
明治時代の上流階級は薩長などの武士が幕府を倒して成り上がった人が多く、その人たちは芸者など花柳界の芸者と結婚をし、地方から山の手に引っ越してきた名門のご婦人たちも、そういった方々と交流し、山の手の芸者言葉を、東京の女性言葉として真似たのかもしれません。
小学館の『日本国語大辞典』によると【「ざま・す」(「ざんす」の変化した語)】とあるがごとくです。江戸時代の「ざんす」は芸者や遊女が使う言葉、それがやがて『ドラえもん』に出てくるスネ夫のママが使うような上流階級の言葉「~ざます」になるとは、言葉の変化とは面白いものですね。
いま「てよだわ言葉」を実際に使っている人は、せいぜい黒柳徹子さんか、オネエと言われる方々くらいで、あとはお嬢様を象徴する「役割語」として小説やマンガで使われています。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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