バブルの頃はいまより豊かだった? 貧しかった?

社会・2023-01-31 18:21
バブルの頃はいまより豊かだった? 貧しかった?
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「あのころはよかった」と、50~70代の人が懐かしむ、1980年代後半から1990年代初めのバブル時代。本当によかったのだろうか?

そもそも幸せや豊かさというのは個人の感覚であり、思い出は美化されるのでなんとも言い難い。
では物価というものから見てみよう。

1990年の場合
大卒初任給、16万9900円
最低賃金1時間、516円
吉野家の牛丼、400円
新聞代1カ月、3190円

う~ん、給料は安い。牛丼は変わらない。いまでは2000~3000円で買える輸入ウイスキー「ジョニーウォーカー」や「ジャックダニエル」が、9千円くらいだったような・・・

バブルの頃には、まだパソコンも携帯電話も一般化していなかった。パソコン一台が40万円くらいしたし、誰もが使えるシロモノではなかった。当然、インターネットも使えない。
だから情報はテレビ・ラジオ・新聞・雑誌のみ。レンタルビデオは一泊500円。

大学生が1人で住むアパートは、和室が多くトイレも和式が多かった。当然、ウォシュレットなんてついているところはなかった。

バブル時代というと、タクシーが止まらず1万円札を出して止めたり、デートのときは最高級ホテルでディナー、夜は毎晩ボディコンのお姉ちゃんとディスコで踊ってたなんてイメージがある。

しかしみんながみんな1万円札を手にタクシーを止めていたわけでも、高級ホテルで彼女とディナーを楽しんでいたわけでもない。
バブル時代といっても、若者の彼女彼氏がいない率はいまと変わらない。

いってみれば、マスコミが「明るく楽しい関西人」を取り上げ、それを見た人が「関西人は全員明るい」と、勘違いするようなものだ。

ただ異様な好景気であったのは確かだ。世界の企業時価総額ランキングベスト10に日本企業が7つ入り、そのうち4つは銀行である。
銀行は、中小企業にこれでもかと金を貸し、中小企業もジャブジャブとその金を使った。
いまのおじさんおばさんたちが「あのころはよかった」というのは、このときの恩恵を受けた人たちであろう。

同時に貧富の差が広がった時代でもあった。
当時若者だった筆者は共同トイレの四畳半のアパートに住んでいたし、すごくおしゃれなトレンディ雑誌の副編集長だった友人はボロボロの6畳間に住んでいた。

日本は80年代に入ってからようやく貧しさから脱出したと言われている。バブルの時代、豊かになった日本に「イタ飯」ブームというものがやってくる。
西洋料理の中でも比較的安価なイタリア料理のことだ。日本人がパスタにわずかに歯ごたえが残る「アルデンテ」を知ったのもこの時代だ。
それまでの日本人は、スパゲティといえばナポリタンかミートソースくらいしか知らなかった。

もしいまの時代を生きている若者100人を、バブル時代へタイムスリップさせたら、ほとんどの人が「不便」「汚い」「帰りたい」というだろう。

ただ、80年代からバブルにかけて、日本中がなんとなく浮かれた気分だったように思う。しかし現代と比べれば、決して豊かとはいえないと思うのだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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