いろいろな意味で、学歴は必要か
社会・2022-04-26 18:01ながく不登校問題を取材してきた。不登校問題の書籍を書き、映画を撮ったこともある。その中で取材をはじめた90年代からずっと不登校関係者が言ってきたことに「学歴は必要ない」というものがある。これは本当だろうか?
2020年度の大学進学率は54.4%。いまは約半数の高卒者が大学に進学し、約半数は大学に行かない時代だ。学力があっても家庭の事情で進学できない人も多い。
大学に進学すると4年で500万円ほどかかるが、高卒と大卒の生涯年収は4000万円ぐらいの違いがある。もちろんこれには個人差があり考え方はそれぞれだ。
筆者個人は、不登校で中卒だった人や、有名大卒の新聞記者や大学教授など、いろいろな人と付き合いがあるが、それらの人たちを観察していると、学歴の差は、後々付き合う人の差に関係してくるようだ。
人はどういう人と付き合うかというと、自分と収入や環境が近い人と付き合うことが多いということだ。
つまり学歴によって、付き合う人が違ってくる。月のおこづかいが1万円の人と5万円の人では食事の場所も変わってくる。読書量が多い人間と、ほとんど本を読まない人間は話が合わなくなってくる。
そして、男女とも7割弱が同じ学歴の人と結婚し、親の学歴は子どもに継承される確率が高いという現実がある。
そして学歴がある人とそうでない人の分断や格差が受け継がれていく。何より、学歴がある人とない人には、職業選択の差がある。
また、残酷な一面として、刑務所の受刑者には低学歴の人が多い。法務省の2010年「矯正統計」によると、男性受刑者の学歴は中卒42.1%、高校中退24.2%、高卒25.2%に対して大卒はわずかに4.4%である。これは低学歴の生きづらさを表しているのかもしれない。
いろいろな意味で、必ずしも学歴は必要ないが、少なくともあって損はなく、またいろいろな面で有利であると言える。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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