小田急10人刺傷事件に見る女性への劣等感

社会・2021-08-11 10:55
小田急10人刺傷事件に見る女性への劣等感
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「誰でもよかった」と、小田急線で10人刺傷した対馬悠介容疑者(36)は警察に語ったという。これはほとんどの通り魔殺人犯に共通することだが、彼らは「誰でもいい」と言いながら、自分より弱そうな相手を選んで襲っている。特に対馬容疑者の場合「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思っていた」「勝ち組の女を殺そうと思った」と明らかに女性を狙っている。

対馬容疑者の供述を見ていると、相当女性に対する偏見と劣等感が強いのだ。

対馬容疑者は、中央大学理工学部に進学するも中退。中退後は、生活はコンビニやパン工場でバイトをしながらナンパをしたり、出会い系にも参加したりしていたようだ。

しかしどこの職場でも人間関係が元で長続きせず、ナンパの成功率は低く、出会い系もうまくいかなかったらしい。そして最後は生活保護を受給するようになる。

犯行当日は万引きを行い、通報した女性を逆恨みし、その女性を殺そうと思ったが、店が閉まっているので、電車内での犯行におよぶことになる。

このように対馬容疑者は女性に対するこだわりが強い。海外では自分の顔や女性に劣等感を持ち、「不本意な禁欲主義者」を意味するインセルという男たちがいて、ときどき大量殺人を犯している。女性への劣等感や偏見からの大量殺人というのは、世界でもときどき起こっていることなのだ。

対馬容疑者も強い女性への偏見・劣等感・蔑視があり、自己肯定感が低く、うまくいかないことを、社会や女性のせいすることころがあったのだろう。

劣等感を持たない人間はいない。しかし強すぎる劣等感は、対人関係を壊しやすく、ますます「世の中は俺を受け入れてくれない」と思うようになり、やがて「誰でもいいから殺したい」と思う人が一定数出てくる。この場合、殺人は社会への復讐であり、同時に自己承認欲求を満たす行為なのだ。

願わくば、これから対馬容疑者に刺激された模倣犯が出てこないことを祈るばかりだ。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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