幕末を駆け抜けた新選組は内ゲバ集団だった?

社会・2021-06-30 18:27
幕末を駆け抜けた新選組は内ゲバ集団だった?
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幕末を描く物語にあるときは主役として、あるときは敵役として必ず登場する新選組。リーダーである近藤勇の享年は33歳というとても若い集団であった。

新選組は尊王攘夷を標ぼうし、天皇と京都を守護する特殊警察として誕生する。彼らの標的が長州や全国の尊王攘夷の浪士であるところが面白い。

新選組の仕事は京都の不逞浪士の取り締まりであるが、池田屋事件以外、これといった不逞浪士を捕縛したり斬ったりという記録は、あまりないのだ。それより多かったのが、組織内の対立や粛清である。

発足当初から近藤派と対立する芹沢派の切腹や暗殺。
新選組総長という立場で脱走した山南啓助を捕らえ詰め腹を切らせる。
伊藤甲子太郎派を惨殺などなど、仲間内の殺戮には枚挙のいとまがないほどだ。
一説によると大阪西町奉行所与力・内山彦次郎を暗殺したのも新選組だという。

不逞浪士の捕縛や浪士を斬ったという記録が少ないというのは、もしかしたら捕縛や探索より警備や威嚇を重要視していたのかもしれない。

新選組と同じく京都の警護をまかされていた見回り組も、坂本龍馬を斬ったという以外、これといった浪士の捕縛をしていないから、そういったものかもしれない。

おもしろいのは、新選組と見回り組は京都市内の管轄地が違っていただけで職種も同じであった。
だが新選組が「局中法度」という掟を作り、破った者を次々と切腹させたり殺していたのと違い、見回り組は掟や規則がほとんどなく、酔って公家の行列に抜刀した隊員が一人切腹させられたくらいで、派閥による殺し合いもなかった。

これは新選組が浪人や百姓、ごろつきなどの集合体であったのに対し、見回り組は旗本の次男三男が中心であったことが関係しているのだろう。

見回り組のような真正武士集団ではない、個性豊かな寄せ集め集団だったからこそ、新選組はいまでも人気があるのに違いない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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