日本SFの超古典、竹取物語に浦島太郎
社会・2022-10-11 18:30日本最古の小説がSF小説であったことをご存じだろうか? それは平安時代に書かれたとされている『竹取物語』である。
作者についてはよくわかっていない。かなりの教養と当時の政治体制などを知らないと書けないと思われるので、貴族階級の人が書いたと考えられている。
物語は「今は昔」にはじまり、竹取の翁(おきな)が、竹林に行くと光る竹があり、その中にかわいらしい女の子がいた。竹取の翁とその妻は女の子を「かぐや姫」と名付け、大切に育てると、3カ月ほどでこの世の者とは思えないほどの美しい女性に育った。
その美しさで有名になったかぐや姫に貴族の子息たちが求婚するもダメで、時の帝もフラれてしまう。
かぐや姫は月の国から来た者で、次の十五夜に月から迎えに来るため、帰らないといけないという。帝は兵士を翁の屋敷の周りに配置するも、かぐや姫は月の世界に帰って行くというもの。
まずこの光る竹が、宇宙船からの脱出用ポッドだったんじゃないかとか、月世界から迎えに来た使者が、乗っているのは今なら明らかにUFOじゃないかなどと想像すると、はるか平安時代によくこんな話が作れたなと感心してしまう。
「浦島太郎」もそうだ。浦島太郎のお話は、室町時代に成立されたと言われるが、その原話は日本書紀や丹後風土記に載っているそうだ。浦島太郎のお話はご存じの通り、子どもにいじめられている亀を助けた浦島太郎が、海の底にある「竜宮城」に連れられ、3年ほどの間、乙姫と共に楽しく暮らし、やがて玉手箱をもらって故郷に帰ると、なんと数百年も月日が経っていたというもの。
子どもの頃「浦島太郎」の話を読んで「海の底の竜宮城に行って、なぜ太郎は溺れないのだ」などと思っていたのだが、これが亀ではなく亀のような形のUFOや宇宙船、竜宮城は海の底ではなく、他の惑星と考えれば、立派なSFである。
そして3年のはずが数百年という時間が経っていたというのも、相対性理論によれば、宇宙船などが光速近くの速さで飛ぶと、地球の時間に比べて時間が遅くなる。これを物理学では「ウラシマ効果」と呼ぶそうだ。
浦島太郎の物語は、明治になってから小学校の教科書用に書き直されており、元々「竜宮城」は「蓬莱(ほうらい)」や「常世(とこよ)の国」という異世界であったらしい。
世界最古のSFは古代ギリシャの作家ルキアノスが書いた「本当の話」という物語であろう。これは未知の海域に旅に出た船が、つむじ風に飛ばされ月の世界に漂着するというもので、月世界人と太陽人の戦争に参加したり、金星やヒアデス星団とプレアデス星団の間にある「灯明の国」を訪れたりする物語である。
大昔の人々も月や夜空の星々を観て、宇宙にも人が住んでいるのかもと思っていたようだ。
ちょうど今、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の若田光一さんが宇宙旅行中である。我々も夜空を見上げて、いろいろな空想を楽しむ余裕が欲しいものだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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