寒い・眠い・ひもじい 自宅で毎朝遭難しそうになる話

エンタメ・2023-02-06 18:52
寒い・眠い・ひもじい 自宅で毎朝遭難しそうになる話
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冬の朝は寒い。
ふとんの中から出たくない。
ふとんの中はぬくぬくしていて気持ちがよく、また眠くなってしまう。
やがて、お腹がすいてくる。

冬山登山で予定通り下山できず、緊急に夜を明かさねばならなくなったとき、「寒い・眠い」に「ひもじい」がプラスされたら、そのときは遭難の危機なのだという。

何を隠そう、これは冬に私が毎朝体験している遭難の危機の話である。
私の職場は私の部屋に置かれた机と椅子である。
同じ部屋にふとんが敷いており、ふとんから職場の机まで1メートルも離れていない。
しかし私は寒さのため、なかなか職場にたどり着けないのだ。

そのうちもうひとつの大敵がやってくる。

尿意だ。

ふとんの外は寒い、まだ眠い、お腹がすいてきた・・・ その上に尿意である。トイレは職場である机よりはるかに遠い。

私は思う。
(思い切ってふとんから飛び出そう。いくら寒くてもいいトシして寝小便とかするよりマシだ・・・)

そのうちますますお腹がすいてくる。尿意は増す。しかしふとんの中という最快適空間から離れたくない。
はやく1メートル先の職場、机に向かって仕事をしなければいけない。締め切りが迫っているのだ。

いや・・・ と考え方をかえる。ふとんの中でもネタは考えられる。つまりいま私は仕事をしているのだ・・・ と言い訳をし、ネタを考える。しかしますます空腹と尿意が私を攻撃してくる。締め切りの焦りが私を苦しめる。

そしていよいよ決断のときが来る。
尿意が限界に達したのだ。
しかしふとんの外は寒い。
だがこのままだとふとんの中で遭難してしまう。
何度かふとんの外に出ようとするも挫折してしまう。

しかしいつまでもふとんの中という快適空間に居続けるわけにはいかない。
思い切ってふとんを跳ねのける。
「さぶさぶさぶさぶ」
いい年齢をしたおっさんが声を出しながらトイレに向かう。
用を足すと、ダイニングキッチンにあるガスファンヒーターのスイッチを押す。
しばしガスファンヒーターの前で暖をとる。

そしてありあわせのものを食べ、ひもじさから解放されると、ようやく職場・机の前に座ることに成功するのだ。

同じように毎朝遭難の危機に遭っている人は少なくないのではないだろうか?

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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