80歳代の親に依存する50歳代のひきこもり問題とは?

社会・2020-12-22 15:41
80歳代の親に依存する50歳代のひきこもり問題とは?
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内閣府による2019年の報告によると、日本には中高年のひきこもりが61万人以上、他の年代を加えると100万人いるという。

8050問題(はちまるごうまるもんだい)という言葉を聞いたことがおありだろうか? 50代のひきこもりが80代に依存するという問題のことだ。これはすでに9060問題となっている親子も多いという。

ひきこもりというのは当然収入がなく、生活費は親に依存するしかない。親が死亡した場合、収入が絶たれ餓死する例も出てきている。あるいは先行きを案じての心中や、親の死体遺棄、死んだ親の年金の不正受給ということも起こっている。

筆者は20年以上前から不登校やひきこもりを取材し、書籍などを書いたりしてきた。20年前、ひきこもりはまだ若い人たちの問題とされてきた。それが最近では全世代の問題であることがわかってきた。

特に今、問題となっている中高年のひきこもりは切実だ。前述したように餓死や心中が現実に起こっている。NHKが2020年に全国1400の自治体の支援窓口にアンケート調査をしたところ、300以上のケースで命の危険があるという答えがあったという。

しかし、ひきこもり本人や親が支援機関に相談することはあまりないことを考えると、どれくらいのひきこもり者とその親が命の危険にさらされているのかは、不明としかいいようがない。

さらに問題を難しくしているのは、本人のプライドや見栄であり、日本独特の『恥』の文化だ。自分たちが明らかに困った状態に陥っているのに、誰かに相談したり、恥と感じたりする人が多いのだ。

また生活保護者等、弱者への世間の冷たさが、困窮者を支援や相談から遠ざけている現状もある。

この問題を放置しておけば、餓死や心中といった問題がどんどん多くなるだろう。高齢化社会のいま、この人たちの孤立を止め、支援に繋げないと大変なことになるに違いない。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学教養学部非常勤講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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