ペリー来航のとき小笠原諸島は米国領になるかもしれなかった
社会・2021-07-03 18:57建国以来、ずっと島国に暮らしてきて、海外からの侵略もほとんど受けなかったに日本民族は、どうも領土意識というものが薄いようだ。
江戸時代、日本はほとんどの外国との国交を断ち、太平の眠りについていた。しかし末期になると西洋列強が次々に現れ、国交を求めるようになる。特に米国のペリーによる黒船来航は強烈だった。
これまでやってきたロシアが比較的紳士的であったのに対し、開国せねば戦争も辞さずという恫喝外交を行ってきたのである。
2回目の来航の時、浦賀で日米和親条約を結ぶことになるのだが、そのとき小笠原諸島についての領土問題が持ち上がる。
ペリーの主張では小笠原諸島は米国領土というものであった。実はこのとき国際的に小笠原諸島は誰の領土でもなく、米国以外にもイギリスが小笠原を狙っていた。
驚いたのは日本の役人である。以前、小笠原に行こうと計画した日本人を“海外に密航しようとした不届き者”として罰したこともあり、そのこともペリーは知っていた。小笠原に行こうとしたことが密航なら、小笠原は日本の領土ではないはずというのだ。
しかもすでに小笠原諸島には、すでに米国人やハワイ人が入植していた。日本側は、日本領土といいながら無人島扱いで役人どころか住民もいない。
それを救ったのが、60年前に海防を主張した林子平の『三国通覧図説』であった。
これがフランス語やドイツ語に翻訳されてヨーロッパに渡っており、そこに小笠原諸島は日本の領土であることが書かれていたため、ペリーも仕方なく小笠原諸島が日本領であることを認めざるを得なかった。
林子平の書がなくば、小笠原諸島は米国領になっていたに違いない。日本にとって恩人である林子平は、鎖国中に海防を主張したため幕府ににらまれ蟄居を命じられ無念の死をむかえている。
もし小笠原諸島が米国領になっていたら、その後の歴史も大きく変わっていたことだろう。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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