かつて大ブームだったフルコンタクト空手の衰退

エンタメ・2023-02-21 23:56
かつて大ブームだったフルコンタクト空手の衰退
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ぼくの友人が出している雑誌で『新・空手道』というものがある。その最新号の中に『極真・フルコンタクト空手の未来のために』という特別寄稿があり、この記事の中に、極真空手やフルコンタクト空手の衰退について書いてあった。書いたのは極真護身空手創始者の浜井識安先生である。

極真空手とは、70年代の大ヒット漫画『空手バカ一代』の主人公大山倍達総裁が創設した空手で、70年代からの格闘技ブームを牽引してきた空手といっていい。
その特徴は、顔面や急所への打撃を禁止した直接打撃性で、その荒々しさからケンカ空手・実戦空手と呼ばれ、多くの直接打撃性(フルコンタクト)空手は極真から枝分かれしてきたものだ。

極真空手は「地上最強の空手」と言われ、「俺は極真の茶帯だぞ」と、他人を脅している場面を実際に目撃したことがある。おそらくこの人は「極真の茶帯」というだけで、相手がビビってしまうような経験があったのかもしれない。

ある意味、極真空手のブランドはそれほどのものであった。それがいまや衰退・凋落しているというのだ。

浜井識安先生の寄稿の中でも書いているが、いまフルコンタクト空手界の少年部は大変流行っている。しかし少年部の選手たちのほとんどは、中学や高校入学の頃に辞めてしまい、選手層であるはずの10代後半や20代の入門者はとても少なく、格闘技に興味がある若者は総合格闘技やキックボクシングに入門するという。

理由はたくさんあるだろう。極真空手は70~90年代の大ブームのときに分裂分派を繰り返し、注目度が低くなってしまった。団体数が多くなったフルコンタクト空手の日本チャンピオンは毎年、何十人も生まれるのだ。

いまマスコミが注目しているのは、キックボクシングや、寝技中に相手を殴ってもいい総合格闘技だ。
かつて寸止めではなく肉体を打ちあうフルコンタクト空手は実戦空手、ケンカ空手と過激なイメージがあったが、いまや顔を打ちあわないフルコンタクト空手は、むしろ地味に映るのかもしれない。

一方、東京五輪に採用された伝統派と言われる「全日本空手道連盟」は選手層も多く、72年に日本体育協会加盟、81年には国体正式種目となり、高校や大学の部活や実業団にも浸透している。

空手から分派したテコンドーも五輪競技として採用されており、世界的には競技人口が多い。

フルコンタクト空手は、マスコミに注目されることで会員数を増やしてきた。
前述したように、フルコンタクト空手の少年部の選手層は厚い。問題は10代後半から30代の新入門者が減っており、一般選手層が薄くなってきているところだ。

一時代を築いたフルコンタクト空手は、時代のあだ花だったのだろうか? フルコンタクト空手の最盛期を知る者としては寂しい限り。なんとか頑張って盛り返してほしいものだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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