声をかけない・一人で食べる新しいサービスとマナー

エンタメ・2021-11-08 18:09
声をかけない・一人で食べる新しいサービスとマナー
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1997年、博多のラーメン店『一蘭』は1人1人仕切られたカウンターを設置。大いに受けて全国に広まった。

以前のアパレルショップであれば、客が入ってくると店員が付きっきりになって、いろいろな洋服をおすすめするのがサービスであったのが、いまや声をかけないのがサービスになってきた。

これらは、他人となるべく接触しないことを求める現代日本人のサービスであり、マナーとなりつつある。これがコロナ禍で一気に進んだ。

これらは別にコロナ禍からはじまったわけではない。コロナ以前から大学の学食では1人席が設けられ、職場ではみんなと一緒に食事するより1人で食事をする人が増えていた。仕事が終わった後のノミニケーションは減り、上司や先輩と一緒に飲食に行くより、気の会った仲間のみで集まるようになっていた。たった一人で食事を楽しむドラマ『孤独のグルメ』は、2012年から続く人気シリーズになっている。

いまや逆の意味で死語になった言葉に『伊達マスク』というものがある。風邪でもなく風邪予防でもないのに、一年中マスクをする人が、2000年代から急速に増えていた。これは日本独特の文化であり風俗であろう。理由としては、自分の容姿を隠し、ストレスを軽減することができるため若者を中心に流行した。

人類は元々群れで暮らす動物である。孤独や孤立は、人間がもっとも恐れるものであり、犯罪者や自殺者の裏側に孤独や孤立が指摘されることも多い。そんな人間が、話しかけられることを嫌い、人と一緒に食事することを避けるようになった。もちろん、人間関係がなくなるということではなく、関係の仕方が変化しているのだ。

いまや非接触・非対面がトレンドとなった。このことについて良し悪しはない。誰も時代の潮流を否定できない。そして非接触・非対面が人々の消費活動や社会環境を変えていく。ついていけない人は取り残されるだけだ。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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