デマ・フェイクニュースの社会学
社会・2020-12-01 20:11今年もあと1ヵ月。まさにコロナに振り回された1年であった。ふと振り返ると、実にいろいろなデマやフェイクニュースが出たものだ。2月の終わりころに出たデマ情報に
「【拡散希望】武漢ウィルスは耐熱性がなく、26~27度の温度で死ぬ。お湯を飲めば予防できます」
などというチェーンメールがずいぶんと流行った。少し考えれば、人間の体温よりはるかに低い温度でウィルスが死ぬなら、そもそも感染しないはず……、と考えてもよさそうなものだが、不安や恐怖というのは考える力を奪うものらしい。ちなみに温水プールの温度が、ちょうどそれくらいである。
トイレットペーパーが無くなるというデマは、最初「無くなるかもしれない」という推測でしかなかったのに、多くの人がいっせいにトイレットペーパーを買いに走ったため、まさに一夜にしてお店からトイレットペーパーもティッシュも姿を消した。
このようなデマやフェイクニュースが広まる背景には、社会の不安がある。東日本大震災のときも、阪神淡路大震災のときも、デマやフェイクニュースが世にあふれた。太平洋戦争中の憲兵隊本部の記録によると戦況が悪化するにともない、デマ・流言が増えている。
1973年(昭和48)はトイレとペーパー騒動や豊川信用金庫取り付け騒ぎがあった年だが、このときは数年前のオイルショックから来る不安感から、ちょっとした噂を本気にして起こった事件だ。
このように社会不安が強くなると、デマが増える。不安が強くなればなるほど、自分の体温より低い温水でもウィルスが死ぬなど、考えればわかることでも信じてしまうようになる。そして不安が強ければ【自粛警察】のように、攻撃的になる。
デマやフェイクニュースは、社会の不安を映す鏡なのだ。そして人は不安が強くなると騙されやすくなるってことも、覚えておいたほうがいいようだ。
プロフィール
おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学教養学部非常勤講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。
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