その雑談があなたを救う
エンタメ・2023-01-11 18:53「タバコミュニケーション」という言葉がある。オフィスでタバコを吸えなくなった喫煙者が、タバコ部屋に行ってタバコを吸う。
「タバコ部屋」には部署や地位に関係なく喫煙者がやって来る。今の時代、タバコを吸うのは少数派だから、一種の仲間意識が生まれ、最初は見知らぬ他部署の社員でも、閉ざされた空間で毎日のように顔を合わせていると、やがて会話をするようになる。
その交わされる話は「雑談」であり、ときに人事情報やスキャンダルなどの社内情報、新企画の話などをする新しいネットワークとなってくる。
大会社ともなると、部署間に交流がなかったり、部署間によっては利益が反し足を引っ張り合うような状況になることもある。
そんなときタバコ部屋のコミュニケーションを通して、調整されることもあるという。
多くの企業はこのタバコ部屋の効果を知っているが、タバコを吸わない多数派から
「しょっちゅうサボっている」
「タバコ部屋から匂いが漏れて来て不快」
などと不満が出て来て全面禁煙になってしまう場合もある。タバコ部屋のコミュニケーションは部署、年齢、地位が関係ない交流になるわけで、タバコ部屋と同じ効果を狙ったサークル活動に力を入れる企業もあるという。
コロナ禍になってからリモート化が進み、いまの若手社員はタバコどころかお酒も飲まないため、直接会ってのコミュニケーションが激減しているとか。
「直接会ってのコミュニケーション」が減ると、対人関係能力が下がってくると言われている。
対人関係能力は仕事上の会話ではなく、雑談や噂話がその能力を上げてくれるものらしい。
雑談とは「無駄話」のことだ。無駄話は脳内から快適なホルモンを分泌させ、脳を活性化してくれる効果がある。
さらに無駄な話であるから気楽にできる。
無駄話は孤独感を癒し、幸福感や共感力を上げることができる。
雑談は、職場や人間関係の潤滑油なのだ。
しかし日本は伝統的に「雑談は無駄」という風潮がある上、人と話すのが苦手という人が意外と多い。
さらに核家族化やご近所づきあいの減少など、雑談をする機会が減っているのが実情だ。
ところが雑談は縦・横・ナナメの人間関係に役に立つ。たくさんの雑談できる仲間を持つことで、人は意外なところから助けられたりするものだ。
それはタバコ部屋でもいいし、趣味の仲間でもいい。軽い気持ちで雑談をする相手を増やすようにしたいものだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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