私たちはわずかな人の目を気にして、思うように生きられない

エンタメ・2022-07-12 18:27
私たちはわずかな人の目を気にして、思うように生きられない
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ダンバー数というものがある。イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが提唱した理論で、「人間が良好な関係を築ける人数は150人程度」というもの。

どうも石器時代の人類の群れは、大きくて150人程度で、1086年、世界初の土地台帳に記録された英国の村の平均的な規模は160人。古代ローマ軍の基本単位(中隊)は160人、旧日本陸軍は136人と、これくらいが人間の集団として落ち着くらしい。

まあ異論もあるのだが、我々が普段さっと名前を思い出せる人数はそんなものかも知れない。その中でも家族以外で親友レベルは1人から多くて5人、よく顔を合わすのは40~50人程度ではないだろうか。

例えば、学校のクラスは、40人くらい。その40人の群れの中で、カーストが生まれ、いくつかのグループに分かれる。

Facebook利用者でも、友達の数は10人以下が47.4%、平均で53人だというから、ある程度親しい人というのは、この程度なのだろう。

と、すると、我々は家族+1~5人が極めて近しく親しい人、あとは多くて40~50人の評価を気にして生活をしているといえる。

これは有名人であっても、本当に気にするのは身近な一部の人の評価や意見だ。

そして多くの人は、そのほんのわずかな、せいぜい【50人以下の人の目を気にして】自分の行動を決め、そのわずかな人の目を気にして、優越感にひたったり劣等感にさいなまれたりする。場合によっては、そのわずかな人たちから低く評価されただけで自信を失い、自殺まで考えてしまう人もいる。

しかしだ。ほとんどの人は、どんどん付き合う人が変わっていく。中学高校の同級生と一生、同じクラスで過ごすわけではない。サラリーマンでも50代までに平均3回ほどの転職を経験する。同じ会社にいても部署が変わり人の出会いは変化していく。

そんなわずかな数の人の目を気にして、言いたいことも言えず、我慢を重ねているとしたら、あるいは友だちの目、ご近所の目、それは目というより、わずか数人と自分を比較して、優越感にひたったりコンプレックスで自信を無くすなどということがあるとしたら、実にもったいない話だ。

小中学生なら、自分の世界はクラスの中が全宇宙であることもあろう。しかし大人になれば、そのわずかな人の目を、それほど気にすることはないのではないだろうか?

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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