幽霊に社会的存在意義はあるのだろうか?
エンタメ・2022-07-27 16:05怪談話の季節がやってきました。みなさんは幽霊を信じているでしょうか? 「見た」という人もたくさんいるでしょうし、「見たことはないけれど心霊体験はある」という人もいることでしょう。
2020年、『博報堂生活総研』の調査によると、33.3%の人が「霊魂を信じる」と答えています。「来世を信じる」人は31.3%だそうですから、日本人の約3割が、幽霊・霊魂・来世といったものを信じていると言えるのでしょう。
幽霊・霊魂・来世というものは物理的には「ない」とされています。それでは「そんなものは信じない」という人に質問です。自分が可愛がっていたペットが亡くなってしまったとします。その亡骸はもうただの肉の塊のはず。だからと言って足蹴にしたりできるでしょうか? ご先祖が眠っているとされるお墓を叩いたりできるでしょうか?
すると幽霊・霊魂・来世などは信じないと言っていた人でも、かなりの人は「それはできない。なんとなく罪悪感をおぼえる」という人が、かなり増えるのではないでしょうか?
宗教の社会的役割を調査している米国のピュー・リサーチ・センターによると、日本は「宗教の社会的役割がもっとも低い国とされています。日本以外で無宗教者が大半を占める国は中国、北朝鮮、チェコ、エストニア、香港とわずか6か国しかないそうです。
しかしそんな国の人々でも、あるいは「幽霊を信じない人」や「無神論者」を自称している人でも、ペットの遺体やお墓をないがしろにするのは「なんとなく罪悪感がある」など素朴な宗教感情を持つ人が半数以上いるようです。
古代より日本宗教の特徴として「怨霊」「祟り」「呪い」を異様に畏れるというものがあります。出雲大社は、高天原から来た征服者である神々が、滅ぼした大国主命を神として祀ったもの。北野天満宮や太宰府天満宮は、無罪の罪で流された菅原道真の鎮魂のため、つまり祟られないようにするために建てられたものです。
怪談話で有名な「四谷怪談」では、演じる俳優やスタッフは、ほぼ全員がお岩さんを祀った神社などにお参りに行くといいます。理由はもちろん「お岩さんの祟りがこわいから」
これらの俳優やスタッフの中で、普段は「幽霊などを信じていない」と公言している人なんかでも「なんとなく気持ちが落ち着かない」や「なんとなく気になる」という感じで、お参りに行くのでしょう。
案外「おてんとう様が見ている」や「なんとなく気になる」「呪いや祟りがこわい」などという素朴な信仰心のようなものが、犯罪を防いでいたり、案外我々の社会を守ってくれているのかもしれません。
と、すれば幽霊にも社会的存在意義があるのかもしれませんね。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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