呪いと祟りと日本人

エンタメ・2021-11-10 18:35
呪いと祟りと日本人
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「え?」と、思われるかも知れないが、日本人は異様なほど『祟り』や『呪い』が日常生活に入ってきている民族なのだ。考えてもみてほしい。日本独特とも言われる先祖供養。供養しないと子孫、つまり子や孫を『祟る』のだ。水子供養は我が子が親を『祟る』と、されているのである。

本当なら、優しいはずのお爺ちゃんやお婆ちゃんや、見守ってくれているはずのご先祖たちが子や孫を祟り、水子は子が親を祟るという文化を我々は持っている。

考えてみればこれは実に怖ろしい文化だ。『呪い』や『祟り』はあまりに身近すぎてほとんどの人が気づかないほどだ。

この『呪い』や『祟り』の文化はもちろん現在でも脈々と生きている。前述した水子の祟りなどは、1970年代半ばに創作され霊感商法だが、80年代になってから定着した比較的新しい『祟り』なのに、日本人は違和感もなく受け入れた。

ちなみに『呪い』とは、生者が他者の不幸を願うもの。『祟り』は神仏や霊、死者などが起こす懲罰だ。

では現代における『呪い』はどのように行われているのであろうか? 真夜中に行う『丑の刻参り』などは現在でも秘かに行われていて、ある研究者が神社の大木を探っていると、藁人形の股間に何本もの釘が打ち込まれ、横には女性の写真の顔と、やはり股間に釘が打ち込まれており、ゾッとしたという。

またネットで「丑の刻参り 通販」で検索すると、『丑の刻参りセット』などといったものが出てくることから、それなりの需要があるのだろう。

呪い研究の第一人者である文化人類学者の小松和彦氏によると、呪いとは「敵意の表明であり殺意の表明である」というから、藁人形が通販で売れているというのは怖ろしい。

いまやネットの中には呪いが溢れている。ネットの誹謗中傷という呪いを受け、自殺という形で人が死ぬこともある。ただし、「人を呪わば穴二つ」というように、呪う側も報いを受けることになるので、やめたほうがいいだろう。

プロフィール

おぐらおさむ
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、社会問題全般に関心が高く、歴史、時代劇、宗教、食文化などをテーマに執筆をしている。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。空手五段。

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