人はなぜ人を食べてはいけないの?

エンタメ・2022-12-08 18:09
人はなぜ人を食べてはいけないの?
閉じる

人類には3大タブーというものがある。『殺人』『近親相姦』『食人』である。この3大タブーのなかで、もっとも罪悪感が強いと言われているのが『食人』

とはいえ、人間は人間を食べる場合もある。一つは極度の飢え。一つは宗教的意味で。あるいは猟奇的犯罪のためなど。

実は、なぜ人は人を食べてはいけないのかという正しい答えなるものはでていない。

72年、アンデス山脈に飛行機が墜落した。乗客45人のうち29人が死亡、16人が生き残った。高い雪山で食料はなく、脱出も不可能。この生き残った人たちは死んだ人たちを食べることで、72日間も生存してその後救助された。

彼らは悪を行ったのだろうか?

狂牛病という牛の病気が話題になったことがある。
牛の餌に同じ牛の肉骨粉を入れたため「共食い」状態となり、その影響で牛の脳がスポンジ状になる病気だという。

食人の習慣があったニューギニアの先住民は、狂牛病と同じような「プリオン病」の症状が出ているため、他の人々はそれを知っていて食人はタブーになったのではないかという説がある。

しかしこの説だと、狂牛病は脳みそや骨髄を食べたことで発病するため、そういった「危険な部位」を避ければ食べてもいいのだろうか?

アンデスの墜落事件は食料がないため仕方なく、ニューギニアの先住民の場合は日常的にたんぱく質が不足していたから人を食べていたという。

宗教的な意味での食人というのもある。
亡くなった人と一体となるためや、魂を受け継ぐためにお骨や体の一部を食べるということもある。
はたしてこの行為は悪なのか?

猟奇犯罪による食人は、まず犯罪であるので、悪かどうか以前の問題。

では、いま牛肉などを人工的に培養する「人工培養肉」が研究されているが、人間の細胞から培養した肉は食べてもいいのか?
これだと誰も死んでいないのだがどうだろう・・・?

このように、食人が悪かどうかは、よくわからないのだ。
人間は石器時代からたびたび、同じ人間を食べてきた。現在においても、ときにそういう事件が起こる。

しかし飢餓でも宗教的なものでもなく、人間を食材として考えた場合、石器時代だと相手を狩るわけだが、人間の特徴として、他の動物以上に復讐心が強いのだ。

いまでも人食い虎とか人食い熊が現れた場合、執拗に追いかけ回し殺すまでやめない。
同じように人間が人間を食材として、他の群れの人間1人を狩ると、たちまち戦争に発達する。
そうなると食材としては、あまりにもリスクとコストが高くなりすぎる。
同じ群れの中だと、たちまち秩序がたもてなくなる。

人間の歴史は戦争の歴史だが、敵を食べるより捕らえて奴隷にしたほうがお得。
だったら飢餓や宗教的儀式以外の食人はタブーにした方がいいと選択したのではないかという説もある。

現代人は実際には人を食べることはしないが、「人を食った性格」のヤツとか「人を食った態度」のヤツがいるから、そういう人とは付き合い方を考えたほうがいい。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

関連記事
関連タグ
エンタメ新着記事